FC2ブログ
07«1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»09

適当広場

のんびり適当にがモットーです。多分

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

category: スポンサー広告

cm --   tb --   page top

あの想いと共に 第83話 

あの想いと共に


第83話



「それでは、私は部隊の編成を。後ほど、北郷殿の目で確認をお願いします」

「あぁ、分かった」

下士官の一人と打ち合わせを終えて、俺は自室に戻ってきた。

「ふぅ」

椅子に音を立てて座って。久しぶりの部屋と演習場の往復で中々に疲れる。装備や食料の発注、誰を連れていくかを選んだり。

今は、その人選が終わって。その中で一番階級の高い彼に持ってきた装備などをつけさせたり、少人数とはいえ補給部隊も必要だから、その用途も考えたり……。

なんてやっていたら、時間は瞬く間に過ぎる。

俺は机にある紙に筆を走らせながら、定軍山のことを…………?

「…………あ」

そういや、まともに俺だけで部隊を率いるってこと、あんまりなかったな……。

……冷静に考えると、天の遣いっていう称号を持つ俺を指揮官に置いて動かせるって、華琳としてはあんまり良くないことなんじゃないか?

華琳がこうした動きを決断するぐらい、俺の立場を疎んでいる奴らが多いのか……蜀の動向を気になってなのか。

普通に考えれば、今の俺の立場は随分と蜀に傾いているように見える。だから、その審議を兼ねて……うーむ。



そんなことを考えているだろうか? 華琳のことだ。裏がある訳じゃないだろう。



だとするなら、俺が魏から離れることで大きな旨味が生まれる……ってことだな。

関羽や朱里に何かする……いやでも、関羽や朱里がどうなるかまでは読めていないはずだ


ということは…………あぁ、そうか。


結局魏の問題ってことかな。俺がここを離れることによって、桂花の準備を一気に進めようってことなのかも。

その俺の予測が正しいなら……帰ってきてからも、本番がある。

やれやれ……疲れるな。定軍山も気は一切抜けないってのに。


コンコン――



「ん?」


「一刀さまー、わたしです、朱里ですー」

「……? あぁ」

窓を見ると、もう日が沈む明るさだった。

俺は部屋に明かりを灯して、

「入っていいよ」

「では、失礼します」

扉を開けて、丁寧に閉めて俺の机の前にやってくる。

「もうこんな時間か。あっという間だったな」

「お疲れ様です。久しぶりのお仕事、どうですか?」

皮肉でもなんでもなく、俺の顔色を伺うように聞いてくる。

「もっと激務をこなしてきたけど、久々だと頭の回転も身体の動きも遅くて困るよ。定軍山に着く前には勘を取り戻しておかないとな」

「是非、そうなさってください。じゃないと、わたしも付いて行きたくなります」

言いながら、何枚かの紙を机の上にのっけてくる。

「ふむ……」

手に取り、目を通していく。

……色んな可能性が書いてあるな。ざっと頭の中でまとめていくと……、


一つ目は、こちらが偵察に出たことでの迎撃で兵を出してくる場合か。

馬超……俺は知っているが、劉備に拾われたらしいことも書いてある。この一つ目の場合は機動力が必要になるから、馬一族が出てくる可能性が高い……ね。


二つ目は、朱里が言っていた伏兵がいる可能性か。

この場合は、誰が来てもおかしくないと書かれている。一応、朱里は蜀に残してきた星や張飛が良いと書いたらしいけど……。

罠の設置や木の枝を折って合図、及び道筋を特定させる方法も書いてある。

前の世界と変わりがないなら、間違いなくこれだろうな。俺の時は、馬超と馬岱、後は黄忠も居たんだっけ……。


三つ目は……ここからは必要ないな。賊が隠れている可能性や、何もない可能性が書かれている。

もし賊に引っ掛かっても負けるような魏の兵じゃないし、数が多ければすぐに逃げれば良い。そんな簡単に遅れは取らないはずだ。


「一刀さまの知る想像では、どのような?」

「伏兵が居て、秋蘭が討ち取られた。朱里の策通りにな」

「…………」

「もう一つの可能性では、俺がそのことを思い出して、秋蘭を助けだした」

「蜀の面々は?」

「馬超、馬岱、黄忠……援軍で星も来たんだったかな」

「…………ふむ」

朱里が腕を組んで、顎に手を当てて思考を巡らせていく。

「愛紗さんがいないから、本国の守りを疎かにはできないんですよね……」

「張飛が居るんじゃないか?」

「そうです。でも、鈴々ちゃんだけど機動力が問題になってきます。だから……星さん、来ないんじゃないかな」

「龐統もそう考えてきそうだけど」

「そう考えはするでしょうけど、だからといって裏をかいて別の何かに蜀本体が狙われたら元も子もないです。馬超さん達を残せばいいという考えもありますが、まだ新参ですし……」

桃香本人は良いだろうが、周りからしたら好感度が足りないか。

「定軍山に馬超達が来るのは必然に近いか。だが、森が主戦場になったって聞いてるぞ。前の戦いで関羽も言っていたけど……」

「色々思うところはあるんですが、とりあえず。森の中で馬を走らせる訳には行かないでしょうけど、ただ、あらかじめ相手を追う道筋を決めておけば、馬を走らせることも可能ですよ」

「……それだけ、蜀が早い段階で定軍山を占領している?」

「です」

なるほどねぇ……。

「ただ、先入観に囚われないでください。二つを合わせてくる可能性もあります」

「二つ?」

どういうことだろう。

「こちらの進軍の報を聞いてから、神速の行軍で定軍山を制圧する可能性もあるってことです」

「…………ふむ」

ふむ?

「それって、別に伏兵がいることと変わらないんじゃないか?」

「どれだけ情報を流してくるのか、という部分ですよ。仮に、一刀さまが定軍山に着く前に、定軍山が占拠されたという知らせを受けたら、どうなさいますか?」

「そりゃ……その時点でこの任務は達成したということにならないか?」

「でも、それが本当かどうかは分かりませんよね? 自分の目で確かめないと。誤報や偽報だったら大変です」

言いたいことが分かってきた。

「結局自分の目で見なくちゃならない。だけど……」

「こちらは相手がどう動いてくるか分からない状況です。そこを先に動いて知らせちゃうんだから、相手の対応も完璧になる」

「百人程度の偵察隊だと知れたら」

「普通なら潰してきますけど……ただ、この百人って数字が本当かどうか、相手には分かりません」

「…………ふぅ」

そうやって読み合いが発展していく訳だよな。

「結局、何が言いたい?」

朱里は少し目を伏せて、心配そうに、

「一刀さまは、伏兵がいるって断定して話を進めようとしている……そう、思えて」

伏兵が居る前提で……か。

「……そうか。それは、確かにな」

俺は机の上に肘をついて、朱里の顔を正面から見る。不思議そうにする朱里に。

「なんだかんだ言って、今まで外れはなかった。でも……今は、朱里がここに居るんだよな」

武将の引き抜きを行った以上、ここからはあったはずの知恵が蜀にはないことになる。つまり、本来生まれるはずの対談や策も無くなる訳だから。

「伏兵は……いると思います。ただ、わたしが書いてきたという部分は向こうでも表に上がるでしょうから……」

「表面上は裏切り者扱いになっているであろう朱里の策なんて、誰が耳を貸すんだろうか」

「わたしは誰にも、蜀を離れるって公言して来ませんでした。置手紙を残しただけで……普通に考えたら、それって蜀を捨てたことになりますよね」

「なるだろうな」

だからこその、先入観の削除を考えろってことだ。

「……やっぱり、着いていこうかな。不安になってきました」

心配そうに俺を見続ける朱里。

「どっちでもいいよ。でも、俺が居なくなることでやれることもあるんじゃないか?」

「んー……あるにはありますけど、今のわたしの現状だと、もう全部一刀さまの前でやった方が効率が良いような気がして。忘れたら元も子もないですし」

「それはそうだが……今日は大丈夫なのか?」

俺は華佗から貰っておいた、紙を引き出しから取り出す。

ここには昨日朱里がやっていたことと、何を食べたかの内容が書かれている。本の内容までは、さすがに書かれていないが……。

食事はいつも華佗と一緒で、夕食は食堂が開いている時間ギリギリに取るようにしている。理由は、その時点で朱里の一日の俺に対する行動は終了。華佗がいつも一緒に居られる訳じゃないから、朱里の行動には制限を掛けた。

「読んでいる本は三つ。仙術の印と妖術界、魏の立憲。食事は昨日はお饅頭しか食べてません。あんまりお腹が空いてなかったのと、一刀さまが定軍山に行くって情報を得たので……食事はいつも華佗さんと一緒に取るようにしています」

合ってるな。

「昨日は殆ど本を読んでいて……でも、一刀さまの出立を聞いてその情報収集を。本当は夕食後にも動きたかったんですけど、華佗さんが見つかりませんでした。一刀さまを呼んでも良かったんですが、準備で忙しいんじゃないかなって」

「確かに。華佗も呼んでいたし」

「だと思いました」

「本の内容は、どうしますか?」

「俺に関係ない本なんだろう?」

「そうですけど……」

「なら、いいさ。でも、華佗と答え合わせだけは続けておいてくれ。俺が戻った時に、知らずに悪化されていても困る」

俺は紙を引き出しに収める。書かれていた内容と話と同じだった。

後は、朱里がこれ以上に何かをしていないことを祈るしかない。と言っても、動き自体は風に監視させているから、何かあれば耳に入ってくるだろうけど……。

「どうせなら、その場にわたしを呼んでくれれば良かったのに……」

「次は気が向いたらそうするよ」

「それ、行ければ行くよって言葉並みに信用出来ませんよね」

露骨に溜息をついて、傍にある椅子に座る。珍しく帽子を脱いで、それを丸テーブルの上に置いた。

「確認なんですから、自分の目で見ないとどうにもならないです」

「そうだな。だから、どの道定軍山までは行かなくちゃならない」

「もし、一刀さまの進軍を聞いてから馬超さん達が来るなら……一刀さまは、馬超さん達にとって親の仇です。気をつけてください」

「執拗に追いかけられそうだよ」

俺は馬に乗って行くが、他のみんなは徒歩だ。何かあった場合、すぐに追いつかれる……術中に嵌まる前に、気付けないとまずいだろうな。

「夏侯淵さんも気付けずにいたから、大変なことになったんです。事前に何か気付ける要素があれば……」

「朱里なら、どう見る? って聞きたいが」

「相手もそう思っているはずですから、あまりわたしの思考には頼らない方が良いかと。繰り返しですね」

「だよな」

朱里だからこそ気付く罠が、こちらにとっての罠の可能性……ね。

「どう誘導されるか分からないので、わたしの書いた部分は話半分でお願いします」

「知らないよりは知っていた方が良い。助かるよ」

「いえ……」

自分の帽子をぽんぽん叩きながら……朱里がぼそっと呟く。

「付いて行きたいなー……」

名残惜しそうに言う。

「好きにすればいい」

「一刀さまならそう言ってくれると思ってましたけど……」

チラッと俺を顔を見て「あ、そうだ」と朱里が思い出したように。

「色々思うところがある部分を省いたままでした。一つだけ、これだけは確実にあると思う要素が」

「確実ってすごいな。なんだ?」

ありがたい助言だと良いが、多分そうじゃないっぽいな、朱里の顔を見るに。

「散々話題に出ましたが、恐らく機動力があると思います。それも、かなりの」

「機動力……」

速さがあるってことだろう。馬超達が来るからだろうか?

「愛紗さんも仰っていましたが、馬超さんや馬岱さんはともかく、馬一族の軍を連れてきたと考えるなら、馬がないと話になりません。彼らは歩兵での力は魏に劣っている。それはこの前の戦いで身に染みているでしょうから」

「馬に乗っていなけりゃこんなもんかって言っていたもんな」

「森で戦うからこそ、馬がない、もしくは決められた道筋でしか馬を動かさない……そういう思考は省いた方が良いかもしれません。あり得ない軌道を、あり得ない速度で迫ってくると思います」

「朱里ならそうする……というより、誰でもそうするってことか」

「考えすぎて、使わない力じゃないです」

具体的な話は、俺は聞いていない。だからこそ、馬超と馬岱の動きには気をつけなくちゃならないか。

なんてことを考えていたら、帽子を手にとって立ち上がる。

「これ以上居ると、色々考えちゃうので! お先に失礼します。華佗さんも残るそうですし、報告は華佗さんに済ませておきますね」

「あぁ」

朱里はぺこっと一礼して、外に出て行った。

……それほど、朱里が付いてきても差は付かないと思うんだが。

でも、朱里の中で龐統に対して危惧だと思える要素があるんだろう。だから、残った方が俺の安全が高いと。

「…………何が危険なのか」

分からないものだけどな。

まぁ……まずは、明日だ。





     ◆  ◆  ◆





出立は正午だ。

だから俺は、朝の内に三姉妹に会って薬を貰おうと思った。向こうから来るよりは、こちらから行った方が妙な噂も立たないだろう。

彼女達が止まっている部屋まで来た俺は、部屋の扉をノックする。

「だぁれ~?」

この声は、天和だな。

「一刀だ」

「あ、一刀?」

すぐにガチャっと扉が開けられる。

そして、

「おっと」

むぎゅっと抱きつかれた。大きな胸が、俺の胸に合わさり潰されて、なんとも心地良い弾力だ。

「一刀、かーずとー♪」

「ここ、廊下だよ。誰もいないけどさ」

部屋に入るように促すと、天和は抱きつきから俺の腕を組むように移動する。

「来たのね。どうかしたの?」

入ると、人和が座ってなにやら書を書いていた。今度の舞台に関する立案のようだ。

「いや。どうなったのかなって思って」

「…………? あぁ、薬のこと?」

忘れてた、みたいな反応された。

それに、地和もいないな。どういうことだ?

「お気付きの通りよ。ちぃ姉さんに薬は持たせたわ。一応、自分の目で確認したいからって。入れ違いになったのね」

「え? そうなの?」

確かに、俺は朝食も食べずにここまでやってきた。仕事に支障が出ないようにするためもあったが。

「まさか、先に行ってるなんて……分かったよ。すぐに戻る」

「え~!? もう戻っちゃうのー? 来たばっかりだしゆっくりしていきなよ~」

ぐいぐいと胸を押し付けてくる。すんごい魅力的だけど……、

「ごめんな、仕事があるんだ。今度担当に戻るっていうし、その時にゆっくりさせてもらうよ」

「そうよ、天和姉さん。無理は言わないの。後でたっぷり我侭聞いて貰うんだから」

「おいおい……」

苦笑する俺だが、天和はまだ不満そうだ。

「む~……絶対だからね?」

「あぁ」

だが、すぐにそう言ってくれて。

「今度、一緒に町に買い物にでも行こう。好きなもの、奢るよ」

「え、ほんと!?」

「程ほどにな」

目を輝かせた天和を置いて、後ろで手を振る人和に手を振り返して、俺は城へと戻った。

「ねぇ、俺に会いに誰か来なかったかい?」

門番の彼らに聞いて見る。

「北郷殿にですか? いえ、誰も尋ねて来ていませんが」

「そう……分かった。ありがとう」

地和は来てないか。どこで道草食ってるんだ、あいつ。

「誰か来たら、取り次いでくれ。人が来ることになってるから」

「分かりました」

そう言伝して、俺は自室に戻った。



しかし、何時になっても地和は来ず。


俺は俺で出撃準備に追われて、すぐに出立の時間になってしまった。



「一刀、無事に帰って来いよ」

城門から出る前に、華佗が見送りに来てくれた。

「うん、大丈夫だよ」

見送りに来たのは、華佗だけだ。関羽は軍事練習に参加しているはずだし、風とは政務。朱里は分からないが、また何かやってるんだろう。

みんなはもう城外まで出て、俺を待っている。後は、俺が合流して一緒に行くだけ。

「誰も来ないんだな」

「自分の人望の無さに呆れるよ」

と言っても、殆どの子達が何かしらの仕事や任務に就いているんだから、当然だ。

「一応、お守りは持ったか?」

「両方ね。大丈夫」

劣化加速と、華佗の鍼はかなりの本数を持たせてもらった。定軍山までの往復を考えれば、一日一本刺しても余るぐらいだ。

「じゃ、行ってくる。華佗も、危ないと思ったら自分の身の安全を優先してね」

「分かった」

俺は馬に乗って、さぁ行こうと前を向いた。



「馬鹿一刀」



「ん?」

声が聞こえて、振り向く。

視界に入ってきたのは、白い外套で身を包み、顔は頭巾で顔を隠した誰かだった。声を考えるなら、女の子のようだが。

「あたしよ。声で分かるでしょ」

「…………地和?」

隣まで来ると、堂々と馬に乗って俺の後ろに座る。

で、抱きつくように体重を預けて、俺の腹部に手を回す。

「お、おい」

「…………これ、やっぱりダメね。一緒に行くわ」

「一緒にって……」

急に何を言い出すんだ。

「どうしたんだよ?」

「あんたが歩いてくるのを見てさ。遠くからよく観察したら、あぁ、多分薬じゃダメだなって思ったの」

一応という感じで、手渡してきて。

「これがそうなのか?」

渡された薬は、小瓶に入っていた。蓋を開けて中を見てみると、赤の液体がどろどろと蠢いている。

その薬に、華佗は興味津々のようだが。

「誰?」

「華佗。知り合いに医者が居るって言ってただろ?」

「あぁ……何度も見ろって煩かったわね」

結局、見てもらってないんだよな。

「でも、自前でなんとか出来るの。ごめんなさい、華佗さん」

「いや、いいさ。見たところ、具合も悪そうではないからな。ただ、色々ある。辛かったら、遠慮なく言ってくれ」

「地和の親衛隊のためにもな」

言いつつ、赤い液体の薬を飲んでみて。

「はいはい。で、どう?」

「…………何にも。苦かっただけ」

喉を通って腹に降りたけど、特段変わった感じはない。

「ご飯は?」

「食べてきたよ。軽くだけど」

「味は?」

「戻ってない」

「じゃあ、ダメね、即効性なのよ、それ」

本当にダメじゃん……。

「だからって、付いてくるのか? これからの準備があるだろ」

「良いのよ、全部人和に任せておけば。それに、そういうことを言い出すなら、一刀の体調を治しておかないと大変じゃない」

「それは……そうか」

って、それってさ。

「時間掛かるんだ?」

「二、三日ぐらい? 定軍山に着く頃には何とか」

「…………うーん」

付きっ切りでそれなら、戻ってからまたなんやかんややるとなると時間が掛かるだろう。

だけど、危険の方が多い。食料は余分に持って行くから大丈夫だとはいえ……。

「何迷ってんのよ? 顔出した方が良い?」

「それはそれで問題があるよ。戦に興味があると思われても良くない」

「じゃあ、このままでいっか」

「……本当に来るのか? 偵察とはいえ、下手したら戦闘になるんだぞ」

「良いって言ってんでしょ。それとも、一生そんな身体でいたいの?」

それは勿論嫌だ。

かといって……どこの誰かも分からない奴を軍の行動に連れて行くって問題がある。

あるが……身体が治るのが早まる。どっちを取るか。

「後で、幾らでも言えるでしょ」

「ん?」

「曹操さん。あたしが付いて行くって言って、あの人が嫌な顔する? ちゃんと理由あるし」

「理由はそうだけど」

「それに、いつまでも無能な担当を付けていた罰よ。我侭くらい聞いてくれるわ」

「…………はぁ」

まぁ、いいか。何かあれば俺が劣化加速を使って守ればいいし。

……いいのかな?

「いいのか?」

華佗にまで聞かれる。

「……また文句言われるのを覚悟で行くよ。兵士達の目もあるけど……予防線だって言って、納得させる」

それに……幾ら地和でも、ここで無理強いはしないだろう。

なのに付いて来たいとこれだけ言うってことは……何か理由があるはず。



「……ん? ぐっ!?」



急に、腹部に痛みと熱さを覚え、嗚咽と大量の唾液が口から漏れ出た。



「治療中」

「お前、な……」

見ると、腹部に回された手が僅かに紫色に光っている。注視しないと分からない程度だが。

だが。

「ん……あれっ?」

ふと、口の中に“味”を感じた。


その上、久しぶりに腹が空いたような気がするような、そうでもないような。


「お腹、空いたかもって思った?」

「あぁ……分かるのか?」

「なら、成功しているわね。このまま一つの方法でいければ良いけど、ダメなら違う形も模索しないとならないわ」

だから時間がある内に、付いて来たいって言うのか。

「バレるなよ……」

「はいはい」

俺は少しだけ後ろを振り返って、少し空いている頭巾の間に指を入れて穴を広げた。

「……なに?」

ちゃんと、地和の顔があった。ならいいや。後はもう、なるようになれだ。

「自分のことを優先するよ。だけど、いざとなったらお前も自分を優先しろよ」

「ずっとしてるわ」

「そうだったな」

俺は馬の腹を蹴る。すると、のそのそと歩き出した。

「気をつけてな」

「あぁ」

思わぬ珍客がくっ付いてきたが……これも俺が定軍山に向かうに至って、必要なことなんだろう。



後は、実際に着いてから考えてみるか……。





続く



スポンサーサイト

category: あの想

cm 0   tb 0   page top

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://lisereaend1234560.blog.fc2.com/tb.php/314-a7aa258c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

page top

プロフィール

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。