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適当広場

のんびり適当にがモットーです。多分

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あの想いと共に 第82話 

あの想いと共に 

第82話



「つっ……」

ズキッ――と、頭が痛み、思わず手で押さえて息を吐く。

目の前の露骨な人の生き死に……ではなく、進展の消失と変更。からの、新たな創造。

今、俺が受けているダメージは秋蘭が本来受け持つべきものだったもの……そう考えると、悪くも無いんだが。

「一刀」

「……人和?」

夕暮れに射しかかろうとする街中で、気付いたら人和が横に居た。

「どうしたんだ?」

話なら、また今度にして欲しいんだが……。

「こんな所で、都合良い偶然……って、具合、悪そうね。姉さんのことで話があったんだけど」

頭に添えられた手を見て言われる。

確かに、体調は最悪だが……地和か。

何か進展があったと見るべきだろうな……ここで後回しにするのは良くないか。

俺は佇まいを直して道の端に移動し、足を止める。

「俺なら大丈夫。地和が?」

「前置きは無しに言うわ。表面上、良くなっているとは思うの」

「表面上……?」

きな臭い言い方だな。

「良くはなっているの。本当よ。ただ……ちょっと、無理している気がして……」

「良くなってはいるけど、無理か……人和が気付くぐらいなら、そうなんじゃないか?」

三人の絆は本物だ。誰かが無理していたり、嘘を吐いていたりしたら、すぐに分かりそうなものだけど。

「そうなんだけど、後遺症のようなものも見えないし、良さそうではあるのよ」

「本当に具合が良いんだけど、同時に無理をしてる?」

「えぇ……」

矛盾している。

してはいるけど……でも、そういうことも往々にあるだろう。特に、地和には隠し事をさせているし……。

「他にも何か理由があるんじゃないか?」

「……やっぱり、そう思う?」

「無理してるけど、元気で頑張りますって、言葉にしたら別に全くないことでもないなってさ。それぐらいなら、時間が解決してくれそうだし」

呼び止めるほどじゃない、と思う。

「そうね……そう言われてみると、そうかもしれない。ちぃ姉さんがこんな風に倒れたのなんて初めてだから、ちょっと過剰に反応しているのかも」

頭を抱えつつ、人和は溜息一つ。

「大事な人だし、心配なのは分かるよ」

俺は心配を装いつつ、話を流すように進める。俺と地和の関係が露呈している訳じゃないが、突っ込まれると面倒だし。

「ありがと。それで、もう一つも発端はちぃ姉さんなんだけど……」

まだあるのか。

俺に顔を近付けて、周りに聞かれないように一言。

「一刀の具合はどうなの? ついでに聞いてこいって、言われて」

「地和に?」

「えぇ」

あいつ……何考えてるんだ?

「見ての通りだよ。良くなったり悪くなったり」

「妖術よね、それ」

「らしいね。詳しくは言えないけど、俺の延命処置のため……らしいよ」

「延命ってあなた……仮死状態にでもしたかったの?」

仮死状態……何も間違ってないんだよなぁ……。

「ちょっと、触るわね」

「えっ」

人和が俺の左胸に、手を当てて目を閉じる。

「れ、人和……?」

「…………」

人目があるから、こういうことはしないで欲しいんだが……。

左胸に当てられた手は、そのまま動いて喉にいったり、腹部に降りたり。

そうして腹部を触っていると、急に腹の中に鋭い痛みが走った。

「つっ……」

「お腹、おかしいんじゃない?」

俺の反応を見てか、それとも何か術を使ったのか……。

「ここだけ、流れがおかしいっていうか……すっごい溜まってる。後、喉の辺りも……飲食関係がダメになってるんじゃないの?」

手を離して、俺の喉と口、そして腹を何度も交互に見る。

「……よく分かるな」

「やっぱり、そうなのね。具体的には?」

少し人目についた。俺達はそれを避けるように、自然と城の方へ歩き出す。人和も着いてきた。

「味覚が……今は殆ど無いな。それと、喉が渇かないし、腹も空かない」

「ふむ……それで?」

「さすがに食べないとまずいって思って、無理に食べてはいるよ。周りの目もあるし……ただ、結構きついな。食べずに居ると身体は不調になるし、かといって……」

「食欲もないのに、いつも通り食べるのは辛い」

「そう。味もしないものを大量に詰め込むのは、精神的に来る。俺の状態は、そんなところだよ」

「……なるほど。よく分かったわ」

言うや否や、すぐに踵を返す人和。

「戻るのか?」

「具合も悪そうだし。聞いた話だと、そこまで大事ではなさそう。もしかしたら、看病が必要になるかもだけど……」

「大事じゃないのに、看病が必要なのか……時間が無いだろ、お互い」

「だから、二人と話し合ってみるわ。一刀、これから遠征でしょ? それが終わったら、一刀をまた担当にしてくれるって曹操さまが言っていたもの。少しぐらい、無理しないとね」

「……マジで?」

そんな話、聞いていないが。

「マジで。頑張ってきてね。出立までには、薬を作っておくから」

そのまま立ち去っていく人和。

「…………」


嘘じゃないだろうな、これは。元通りになるかもしれないってことだが。

新しい仕事が増える……まぁ、今はまず城に戻ろう。





     ◆  ◆  ◆





「定軍山……定軍山ですか~」

自室に戻ってきて。

机の上に、まとまった資料が置いてあった。さっさと確認して準備しろってことね。

それを視認してから、俺は早速、華佗と風を呼ぶ。

風は仕事中だったみたいだが、それをほっぽりだしてこっちにきて。今は資料に釘付けだ。

華佗は軍務についていたみたいだが、俺が呼んだということもあって、すぐに来てくれた。

「また、魏のみんなに悪い目で見られるな」

「上官に従うのが部下の務めですから」

「俺がいなくなったから、魏が負ける……なんてことはないだろ」

こめかみに鍼を刺された俺と、渡された資料を交互に見ながら風が面倒そうに溜息を吐く。

「面白そうだよな」

からかうように言うと、風が口をへの字に曲げて、

「何がですか。でも、お兄さんが定軍山へ視察ね~……へ~……てっきり、秋蘭さん辺りに任されると思っていたんですが」

「定軍山の話は議題に上がってたのか?」

「んー……」

ぺらぺらと資料をまくる。集中しているみたいだ。

「……まぁいいや。華佗、こっちなんだけど」

俺は風に見えないように腹を撫でる。すると、すぐに察してくれたようで、

「良いのか?」

風が居る場所で話していいのか? ってことを言いたいんだろう。

……少し、考えもある。聞かれていた方が、事の流れはスムーズに行くはずだ。

俺は頷きつつ、

「向こうの奴らに、ちょっと手を打ってもらった。何とか出来るって話をくれたよ」

「おぉ、それは良かった!」

珍しく、大きめなリアクションを取った華佗。

風もちょこんと顔を上げて……でも、すぐにまた資料に目を通す。

「どうにかなるなら、願ったり叶ったりだよ」

「一応な……それでもダメなら、前に言った通り朱里にも手伝ってもらうよ」

「朱里か。どうしてこんなやり方をしたのか、まだ聞いてないんだろ?」

「まぁね」

何故? という顔をされて。

「治そうとしているってのと、不調を悟られたくないってのと……まだ、朱里に対する枷が嵌まりきってない感じがあったから。今はもう、そうでもないけど」

「聞いて、素直に言うとも思えないしな」

「以前はね。今なら、そこそこ喋ってくれそうじゃない?」

「また、なんかしたんですか」

「資料読むのか、話を聞くのかどっちかにしろよ」

普通に話に割り込んできた風だったが、膝の上に資料を置いたまま、顔を上げる。話を聞く方にシフトしたようだ。

「お兄さんのその怖いぶすっと治療。もうしなくてよくなるんですか?」

ぶすっとって……鍼の効果音か?

「いいや、これは治らないって言ったろ。まだ色々あってな」

「ふーん……ま、無茶はしないようにお願いします」

珍しく簡潔にしめて、寝台にうつ伏せに横たわって資料を広げていく風。

足をぱたぱたしながらやっているので、どんどん服の裾がめくれていく。

「下着が見えるぞ」

「むっ……変態お兄さんが顔を覗かせましたね」

可愛らしくちょっとだけ裾を抑えて、でもすぐに資料と睨めっこ。

「自分の部屋じゃないんだから」

「それだけ、俺らに慣れたってことじゃないか?」

「どうだか……」

掴みにくさでは、風は随一だ。暖簾に腕押しというか……ただその分、突発的に起こる強引な力押しには弱い面がある。

だから、今この場に居るんだけど。

「でも、治るなら越したことはない。具体的には?」

「薬を貰える手筈になってはいる……けど、看病が必要かもしれないとも、言われたな」

「看病か……薬の効果がないなら、直に薄めるんだろうな」

腕を組みながら、うんうんと納得するように華佗が頷く。

「分かるんだ?」

「調べたよ。打開策が出てはいたんだが……報告をしてなかったが、材料は揃えられても、その材料に込める力が俺にはなくてな」

妖術が使えないってことね。

「俺を通すかどうか迷っている時に、向こうから朗報が降ってきたと」

「予断を許さない状況だったし、間を置いていたが……そうなるな。でもこれで、一つ面倒な問題が解決出来るといいな」

身体の問題だし、華佗は頭を悩ませていただろう。三姉妹以外は違和感を覚えていたとしても、知らなかっただろうが……。

「終わりましたー?」

子供見たく足をぱたぱたと動かしながら、声を掛けてくる。

「あぁ、終わったぞ」

華佗が言いながら、鍼を抜いた。

風がちょいちょいと俺らに背中を向けたまま手招きをしているので、近付いて寝台に座る。

「どうだ?」

「一個中隊……とはいっても、百人ぐらいですね。視察なんだし、大人数で行ってもとは思いますけど」

「不安がある?」

「仮にですよ。定軍山は隠れ蓑には打ってつけなんです。だから、賊の巣窟みたくなっているし、どの国も手が出しにくい。今回は、蜀の動向及び定軍山付近の賊に変な動きがないか……って部分を調べて来いって話なんでしょうけどー」

「いつも通りじゃないか」

自分でも白々しいと思いながら、そう口にする。

「この時期なのが、ちょっとなー……漢中も落とされているし、涼州落としている間、蜀は平定と国力上昇に努めていたみたいですけど……」

「そうじゃないと思うから、定軍山を見てこいって話だろ」

「ですです。んー……」

実際そうじゃないんだけど。

風が唸りながら資料と睨めっこしつつ、

「伏兵とか居たら……百人ぐらいなら一瞬で負けちゃいますね」

「そんなに大人数隠れられるものだっけ?」

「山ですよ? 千……二千は居るって考えた方がいいかも。あ、居るならですけどね、勿論」

……随分と、伏兵が居るという前提で話をするんだな。

前の世界でもこうだったんだろうか? でもそれなら、秋蘭がやられるような事態にはなってないと思うし……。

「さっきも聞いたが」

「定軍山のお話ですか? いえ、風は何にも知らされてないです。稟ちゃんと桂花ちゃんの二人で決めたんじゃないですかね」

「……お前が話に加わっていたら、どうした?」

「行くなら五千は連れてけって言ったと思います。余裕はあんまないんですけど……それでも、動かすだけの価値は定軍山にはありますし、蜀がいないならそのまま自分の領地にして目を光らせる場所にすればいいですもん」

「それはもう、偵察じゃなくて討伐や占領じゃないか。程昱はそう言うが、任務自体が違うんだろ?」

「そですねー……だから風は、偵察なんてせずに制圧にしましょうって提言したでしょうね。もう後の祭ですけど」

「何で程昱は話に加わらせてもらえなかったんだ?」

「俺のせい?」

「お兄さんは関係ないです。ただ単純に、軍務と政務っていう元からの仕事もそうですけど、お兄さんの仕事も風が今は担当していますからね。大規模な遠征ならともかく、視察偵察は一々風に回さないことが多いんですよ。忙しいんですもん」

「そっか」

「忙しいんですよ」

文句を言って、ごろごろ人の寝台の上で回って、俺に身体をぶつけてくる。

「あぁ、分かった分かった。戻ってきたら手伝いぐらいしてやるよ」

言うと、風がおや? というように首を傾げた。

「…………ということは、お兄さんの急務は一応終わったんですね。定軍山のお話だったんですか?」

一言で、そう繋げて来るか。

「かもな。どっちにしたって、華琳からやれって言われたらやるんだけどさ」

「ふーん……」

怪しいっていう目でこちらを見上げてきて……、

「まー、風に面倒事を押し付けないならなんでもいいです。だけど……本当に行くんですか? 風は付いていけませんよ?」

「俺は一緒に行くよ」

風は確かに仕事が多いし、華佗は魏のことを無視してでも来るだろう。



ただ……うーん。



華佗の能力は確かに欲しい。俺の身体のこともあるし。

でも、状況を考えるとな……華佗を魏から離すのは……というよりも。

だから、身体の話を今ここでしていたというのもあるんだが。

「風は俺が居ない間の魏のことを見ていて欲しいけど……華佗はどうしようかな」

少し悩む。

問題は、朱里と関羽の二人。

そして、もう一つ……。

「おいおい、俺に付いてくるなって言うのか?」

「勿論、一緒に来て欲しい。ただ……朱里と関羽がさ。俺が居ない間にどういう思考の変化を見せるか分からないってのがな」

「それはそうかもしれんが……」

最悪のケースってのは、常に考えておかなくちゃならない。特に、踏み込みすぎているあの二人は危険なんだ。

「それに……問題はもう一つある。一番まずいのは、身動きの出来ない風を狙われることだよ」

「風が?」

自分に話が回ってくると思ってなかったのか、起き上がって俺の隣に座る。丁度、華佗と俺で挟む形になった。

「風には明確な役割がある。それに気付くとは思えないし、そんな危険を冒すとも思えないが……」

「何があるか、分からんか」

「それに、蜀の二人だけじゃない。以前の、関羽のようなこともあるだろ」

「……確かにな」

華佗が腕を組んで、俺から視線を外す。

俺じゃない俺に狙われた、というあの話。

あの話は俺自身もよく分かっていないが……一番の恐怖は、無差別に狙われる可能性があるということだ。

関羽で抵抗出来ないぐらい強い相手だと想定すると、風が狙われたらひとたまりもない。

「関羽に護衛を頼むわけにはいかないし、朱里はあんなんだろ? そういう意味であの二人が狙われるとは思いにくいんだよな」

「仮にやられたとしても、俺らの目的に対して大きな痛手になるという訳でもない」

「抜け道を見つけられる可能性を潰されるのは痛いっちゃ痛いけどね」

ただ、やっぱり今のところ、本筋からは部外者なのだ、あの二人は。

「その点、風は俺たちの目的に大きく関与している。風に危害を及ばす訳にはいかない」

「でも、ここは魏の本拠ですよ? ここで安全じゃないなら、どこが安全だって言うんですか?」

「……理屈じゃないんだよな」

風の話は最もで。

でも、俺や華佗の話は最もらしいことじゃ片付けられない類のものばかりだ。

「理屈じゃないって言い方、嫌いです」

「事実なんだし、受け止めてくれ。だから、もし最悪の事態が起こった場合、対処出来るのは華佗だけになる」

「…………んー」

悩む様子を見せて。



相当悩んで、



「…………そう、か」



最終的に、そういう言葉が出てきた。

「治療自体は、鍼があれば何とかならないかな? ほら、以前の関羽のアレみたいに」

「出来ると言えば、出来るさ。刺せば効果は発揮するし……ただ、調整がな」

「いつもしてくれてるよね。感謝してる」

「よく言うよ……でも、確かにそれしかないな。程昱をやらせる訳にはいかない」

「むぅ……」

また二人で変な話してる――って顔をしている。

「そんな感じだ」

「なーにがでーすかー! もー……でも、風も何かに狙われているってことでいいんですよね? それ」

「そうだな。だから、華佗も残る」

「風が居る場所で、そんな話してよかったんですか?」

「結果だけ伝えたら、お前ならどう思う?」

風は飴を取りだしてぺろぺろ舐めつつ、

「そですねー……関羽さんと諸葛亮さんが居るから、と思いますけど。でも確かに、それだけが理由って言えば弱い気がしますね。仮にも協力者ですし、お兄さんが傍に居ないからこそ出来ることも多いでしょうから」

「はっきり言うね」

「お兄さん、色々邪魔ですもん。制約や制限ばっかりで。だから、お二人はお二人で試してみたいことってあると思いますよ」

じゃあ、より華佗の待機は必要じゃないか?

その意図が伝わったのか、俺が見ると露骨に嫌そうな溜息を吐かれた。

「頼むよ」

「分かってるよ。いざとなれば、曹操にも助けてもらうさ」

「それだけ大きく動いてくればね。目立つようなら、華琳も手を貸してくれると思う。借金については、俺の名前を出していいから」

「そこまでにはならないでほしいがな」

違いない。

「それで、ですけど」

風が俺に寄り掛かってくる。ふわっと女の子の香りが鼻をくすぐって……相変わらず、軽い奴だな。全然重みを感じない。

「件のお二人には、なんて?」

風をあやしつつ……朱里と関羽か。


うーん…………。





     ◆  ◆  ◆





言わない訳にもいかないだろう。

という訳で、俺は早朝の確認会議で朱里と関羽を呼び出す。

「どうかしたんですか?」

そう言う関羽と。

「……一刀さま、偵察目的の遠征に行かれるとか。本当ですか?」

既に情報を掴んでいる朱里。こういう部分では、差が出るよな。

「偵察? どこへ?」

関羽はやはり知らなかったらしく、すぐに問いただしてくる。

「定軍山」

「……なるほど。呼び出したのは、そのお話ですか」

少し考える素振りを見せたが、関羽はすぐにそう言った。

「俺らが涼州を攻めている間に、蜀が定軍山を手に入れてないか……そう思っての話だと思う」

「蜀に関することならば、私は何も言えません」

目を瞑って、自分は関わりを持たないという構え。

「どこかに攻め入るというのであれば、付いて行くことも考えますが……偵察が目的ならば、交戦はしないでしょうし、しそうになっても退却が常でしょう? 魏の兵もいるなら……そう簡単に付け入られることはないはずです」

まぁ、関羽はそうだろう。目の前に俺の敵が居て、そいつが俺の命を狙っているなら蜀だろうが何だろうか関係なく殺すだろうけど……。

元々こういう関係だし、それが俺の手助けになるなら来るが……今回は偵察が目的。俺が怪我をする可能性は低いと判断している。

「私の考えは、そういうものですが……北郷殿は此度の偵察任務。どう思われているのですか?」

「どうって?」

「ただの偵察? 蜀の動向調査? それとも……」

……あぁ、うん。俺個人の問題に関係があるのか? って話ね。

「そういう意味や意図は今回の話にはないな」

実際には、もうあったというべきなんだろうけど。それを関羽に説明する必要はない。朱里も視線だけ明後日の方を向いて何か考えている。

「ならば、私が必ず同行する理由もありませんね。無論、北郷殿が付いてこいと言うのであれば、共に行きますが」

「んー……どうするかな」

本当に、今回はどっちでも良い。

関羽の忠誠なんてある意味あってないようなものなんだし、それを確認するため……なんて行為は不要だ。

なら……余計な要素が付いてくるよりも、魏に閉じ込めておいたほうがいいだろうか? 霞や華琳も喜ぶだろうし、逆にそれが目を光らせることにもなる。

関羽自身の力は頼りになるから、傍に居てくれるだけで安心度は増すけど……。



…………そう、だな。




「いや、関羽は今回必要ないよ」

安心と不安が同時に付き纏う要素も、そうないと思う。

俺がそう言うと……なんか、眉を顰められた。

なんでそんな顔をされたのか意味が分からないが、言葉は続ける。

「裏切るなんて思っちゃいないが、だからといって余分な力を持っていて欲を出す訳にもいかない」

「不要な欲を出す男ですか? あなたが」

「万が一ってこともあるさ」

起こる出来事は分かっているし、事前の対処は出来るはずだ。

なら、元々いなかった関羽を連れて行って場を掻き乱す必要もないと判断した。

「軍師は誰か付くんですか?」

「いや、付かないな。深入りするわけでもないし」

「……そですか」

朱里は朱里で、また何かを考えている。

何を考えて……と思ったら、



「多分、定軍山には蜀の伏兵が居ます」



「なっ――」

「ふむ」

朱里の口から出た言葉は……俺にとっては想定内だったものだ。

だが、関羽にとっては違ったんだろう。一気に表情が険しくなる。

「朱里……!」

「愛紗さんも行かないって言うし、それなら出来る限り一刀さまの負担を減らしておかないといけません」

と、言うことはだ。

「朱里もお留守番か」

「わたしも付いて行きたいんですけど、多分行かない方が良いんじゃないかなって思うんです。わたしが置いてきた立案書に定軍山のことも書いてあるし……だから、わたしが直接行くと先入観が多くなりそうで」

「朱里の思考を逆手に取った策を講じられる可能性がある」

「雛里ちゃんなら、間違いなく。そこを鑑みて読み合い合戦しても楽しそうなんですけど……偵察が目的なのに、そこまで大掛かりにすることもないのかなって」

「確かにな」

読み合いをするってことは、その都度のタイムラグが僅かでも必ず発生することになる。それで足が遅くなってもいけない。

「後で、書にまとめてお伺いします。夜にまた来ても大丈夫ですか?」

「あぁ、頼む」

「御意です。では、また夜に」

澄ました顔で言うと、朱里はすぐに外に出て行った。関羽が居る場所で確認も出来ないだろうしな。

「…………」

「納得いかないって顔だな」

憮然とした顔をして、立ちすくんでいる関羽。

「どうでしょう……」

「朱里がここまで俺に協力的なことが、気に食わない?」

「それもあります。ですが……ここで蜀が定軍山にいることを露呈させ、北郷殿の援護をしたとして……それの何が本来の件に関わってくるのか、理解出来ません」

傍から見れば、ただ告げ口しているだけだもんな。

「関羽ほど急ぎもしていないし、余裕もある訳じゃないんだろ」

「……矛盾していませんか? 余裕がないのに、急ぎもしないなんて」

「余裕が無いからこそ、歩みを遅くしているのさ」

させた、という言い方が正しいかもしれないが。

「…………同行しなくて、よろしいのですね?」

「付いてきたい?」

「……本音では、離れたくはありません。でも…………」


…………迷っているな。


ここで迷うってことは、何かを掴んで、試したいことがあるってことになる……。



「俺には言いたくないことがある」

「お互い様でしょう」

「好きにやれ。それが俺にとって足しになるか、足を引かれるかは……お前の決断次第だ」

逡巡、沈黙の間があり。

「…………失礼します」

関羽はそのまま出て行く。



さて……これで、本格的に俺が一人で定軍山に向かうことになるな。



俺専用の大きな戦力が手元に何もないってのは、不安にもなるが……これはこれで、様々なことを調べるチャンスでもある。風の言う通り、俺が居なくなったのを見て動き出す輩も多いだろうから。

関羽が何をしているのかは、風に調べさせておこう。

朱里が夜に来るっていうし、そこで話を聞いて……あぁ、そうだな。明朝に地和達にあって薬がどうなっているかも聞いておかなくちゃ。



……何はともあれ、朱里が定軍山で何を画策していたのか。そこからだな。




続く


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