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適当広場

のんびり適当にがモットーです。多分

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あの想いと共に 第81話 

あの想いと共に 


第81話



「一刀は――――顔良が生きているってこと、知ってた?」



良い笑顔だなぁ、華琳。確証も根拠もなく、そんなことぶっこまないだろ、君。

ぶっこんでくるような子ではないが、顔良のことか。んー……現時点では、どうだろうか。魏のみんなには、直接的に俺と顔良の関係は薄いと思われているだろうけど。

このタイミングでのこの話題。ただ聞きたいって感情もあるだろうけど……どうだろうな。絶対、他にも何かあるんだろうけど。



……まぁいい。今の問題は、顔良が生きているかどうかということを、俺が知っているかどうかってことだ。



そこだけを鑑みれば……。



「信じてもらえないかもしれない……そう思っていたから、話してないことがあったよ」


ここは――知らないという選択肢は取るべきじゃないだろう。


呉から戻ってくる際のこともあるし、関羽もあの場に居た。後で幾らでも口裏を合わせられるけれど……顔良達本人に話を聞かれたらアウトだ。

「へぇ……どんなこと?」

「以前、天幕で……呉に渡って、そこから戻ってきて合流したって言ったよな? 実は、その道中で……袁紹達に会っていたんだ」

「…………中々、面白いことを言うじゃない」

顔は笑顔のままだ。だが、声が非常に怖い。

ここまで何故隠していたのかっていう感情が華琳の身体が溢れ出ている。さっさと話を進めないと。

「話に盛り込まなかったのは謝るよ。ただ……そこで、ちょっとあり得ないものを見てさ」

まだ、直接顔良には接触していないようだし、何より現状で変に袁紹達を刺激する利点がない。そんなことをすれば、経緯はどうあれ収まってきた顔良の生死問題をまた扱わなくちゃいけなくなる。

なら……俺と顔良の関係性は華琳には伝わっていないはずだ。そう仮定をして、まずは話を進めてみよう。

「そこに居たのが、顔良?」

「うん。生きているのが不思議だったよ。少し話もしてみたけど……私達は、もう大事を為すことはないから、見逃してくれって言われた」

「あれだけの強国を持っていたのに、今じゃただの根無し草だものね。そういう思考に落ち着く理由も分からないでもないわ」

「だから……生きているのを知っていたのかどうか、という話では首を縦に振れるよ。でも、華琳が言いたいのはそういうことじゃないんだろ?」

「そうね。ちなみに、その現場に関羽は?」

ま、そうくるよな。

「いたよ。確実に仕留めたはずなんですが……って言ってた。俺にはそこら辺の具合は分からないし、過ぎたことでもあるし。何より、その時には華琳と劉備が戦うって話が持ち上がっていたから、もう頭がそっちのことでいっぱいだったよ」

「…………それは、後で私の方から関羽に聞いて見るわ」

逡巡しつつ、華琳が言う。

口裏合わせるように言っておかないと……今の関羽なら余計なことは言わないと思うが、念には念をだ。

「それで?」

「一刀は、噂を聞いたこと、あるかしら? 官渡での……まるで、亡霊が出たとでも言うような、子供が思い描くような絵空事が囁かれたのだけど」

「…………顔良が、生きていたって話?」

それ自体は、俺が戻ってきてから兵士に聞かれたことがある。関羽にちゃんとトドメを刺したんですか? って言われて。

「えぇ。知っていたのね」

「俺と関羽が一緒に居る時に、聞かれたからね。関羽は間違いなく殺したって断言したけど……現に、顔良は生きているんだよな」

「えぇ、生きているの。でも、そうなると様々なことに辻褄が合わなくなるわ」

「……そうだねぇ」

「官渡での麗羽側の無理な進軍は、顔良の仇討ちという名目で行なわれたものよ。しかし、顔良が生きているとなれば、あのような行為には及んで来なかったはずだし、それを隠す理由もない……おかしなことばかりが最後に集中して、私達は偶然とも言える勝利を掴み取ったわ」

「誰かの陰謀でもあったのかな?」

「袁術がそこまで頭が回るとは思えないし……呉の周瑜が怪しいけれど、その時は孫家の連中は恐らく軍議にすら参加していないわ。していたとしても、発言権は無かったはず。あの女が指揮する前としている時では、動きが子供と大人ぐらいの違いがあったもの」

「だけど、顔良は実際に今も生きているんだろ? じゃあ……誰かが隠したって考えるのが一番自然というか、そうじゃなきゃ話が成り立たない」

「一刀が隠していたのではないの?」



……………………。



「さらっと、面白いことを言うね、華琳」

「今日はその話をしにきたのよ。分かっていて、こんな話の流れにしているのでしょう?」

「さぁ…………」



さて、余りにもあっさりと切り込んできたな。



「なんで、そう思っているのか聞きたいな」

「自分から話してはくれないのね」

俺はお茶を一口飲んで、お手上げポーズ。

だが、華琳は呆れてはいないようだ。どうせそうなるだろうって、思っていたのかもしれない。

華琳はテーブルの上で指組みをして、挑発的に俺を見る。

「ずっと不思議だったの。官渡での結果は、何度も言うけど敗戦よ。だけど……一刀の兵糧庫の話、顔良の亡霊……」

「確かに、不思議な話だよな」

「孫家の唐突な裏切りもよ」

…………あったねぇ、そんなの。

俺は背もたれに寄りかかったまま、面倒そうに嘆息を一つ。

「まるで、私達が来るのが分かっていたかのような動きだったわ。敵の指揮系統は更に混乱。顔良が生きていたことによって士気が下がった袁紹軍の頼みの綱ともいえた、袁術軍が丸ごと官渡からいなくなって……おかげで楽が出来たけど」

「元からするつもりだったんじゃないか? 俺が兵糧庫を落とした時が、好機だと思って」

「私も最初はそう考えたわ。顔良を掴んでいたのも、孫家……兵糧庫を落として、私達が攻めて来るのを予見し、満を持して顔良を手放す……分かりやすいけれど、余りにも稚拙で、二流の作家が考えそうなことよね。好きじゃないわ」

「二流の話の流れでは、納得がいかないと」

「袁術を追撃する場面が、どうにも早かったのよ。兵糧庫が落とされてから用意したんじゃ、あの速度は出ないわ。だって、私達が到着した頃には、もう袁術軍は根こそぎ居なかったのよ?」

「それを、元からとは思えない?」

「官渡では、麗羽側は勝てる勝負だと確信していたわ。勝てると分かっていて、そこで普通裏切るかしら? そんなことしたら、袁術と麗羽……二つの軍に挟まれてしまうもの。あの周瑜が、そんな失策を選ぶとは思えないわ」

なるほど、筋は通っている。

「だから、孫家じゃなく、俺がやったと思ったんだ?」

「しばらく一刀に何もさせなかったのは、動向を知りたかったというのと……私にかまけて欲しかったからよ。戻ってきてからというもの、随分と私の周りを調べているみたいじゃない?」

否定は……しない方がいいか。

「まぁね。官渡絡みじゃないけど」

「そうなの?」

「そうだよ。俺にとって、官渡は終わった話だからね」

「私にとっては、そうじゃないわ。いえ……そうだったはず、と言うべきなのかしらね」

華琳は両手でお茶を持って、行儀良く一口啜った。喉を潤して、また会話に興じる。

「負けて悔しかったから、諸葛亮に打開策は聞いたけれど。いつまでも過去を見ているような女ではないもの。だけど……涼州で、あなたの一言を聞いてから、これはおかしいと思ったのよ」

涼州…………何か、言ったか?

「分からない?」

「期待に添えそうに無い」

「一言だけよ。一刀、あなたは……華佗には、“致命的な重傷を瞬時に治す能力”があると発言したわ」

華佗の能力……春蘭の話のことか。

「確かに、したね。でも、あれは……」

「理に適った物言いよ。そういう側面があったというのを、否定するつもりはないし、むしろ肯定的に受け止めているわ。だけど……そこで、繋がったのよ」

「……何が?」

華琳は穏やかな笑みのまま、



「あぁ……顔良を生かして使ったのは、一刀だったんだなって」



…………どこでどう判断すれば、そう繋がるのか。

「はぁ……」

「さっきから……何で、溜息を吐くのよ」

「面白いなぁ、と思って。華琳と話していると、いつも飽きない」

「詰問されているっていうのに、余裕ね」

「睦まじい会話だけだと、飽きちゃうだろ? たまにはこういった、肝が冷えそうな会話をしないと」

「……自分がやったって、認めるってこと?」

「冷えそうな、って言っただろ? 最後まで話してくれよ。華琳が何を思ったのか、知りたいな」

やっぱり、直接的な何かを掴んでいるんだろう。じゃなきゃ、こうして来ないしな。

さて、どういう流れを持ってくるのか……。

華琳は姿勢を少し正して、ただ俺を見て、

「話を聞いて、すぐに思ったのよ。顔良に関羽はトドメを刺した。でも……その致命傷が顔良の命に届ききる前に、華佗が治していたらどうだろうか? って」

「そんなことだろうと思ったけど。だけど、周りの目もあったんじゃない?」

「顔良を倒してから、華佗は何をしていたの? 報告書を見直したら、誰よりも早く本陣に戻ってきていたみたいだけど」

誰よりも早く戻ってきたという報告……?

そんな報告書があったって? …………信じがたいな。

…………どうだろうか、これ。華琳が俺にブラフを掛けてくるとは思えないけど。

「初耳だな。それ、本当?」

「えぇ、本当よ。話では、華佗は自軍の死体を持ってきたと話していたらしいけれど……その死体っていうの、怪しいと思わない?」

「それが、顔良だって言いたい」

「無茶があると思う?」

「あったとして……まぁ、出来たとしようか。でも、戦場中央から死に掛けの顔良を治療もせずに本陣まで持ってきたとして、助かるかな?」

「布越しに鍼を刺せば、光も見えないわね」

「面白い発想だ。でも、その通りだね」

実際にやってはいないが、そうやって“やってもばれにくいタイミング”があれば、じゃあそこでやったんだろうって話になってくるか。

「確かに、色々と問題はあるわ。二週間近い時間をどう過ごしたのかとか、食料の問題とか。軍でのそういった部分で差異は見られなかったし」

「珍しく回りくどい。良いんだよ、華琳。素直に思ったことを言ってくれて」

俺は指を組んで、華琳を少し煽ってみる。

すると、それこそ珍しく顔をというか……眉を顰めた。

「あのね……これでも、結構言葉を選んでいるのよ? 風が面倒なことを言うから」

「風が?」

あいつ、また何かやらかしたのか?

……なんて、思ったが。

「一刀が考えているようなことではないわ。ただあの子は、私の接し方が間違ってないと言ったの。自分が早すぎて自滅して、桂花は知りすぎて深みに嵌まる。一刀にとっての真実を知れば知るほど、悲惨な目に合う……ってね」

「十分、危ない発言しているよ」

あいつ、余計なこと言うなって言ったのに……。

でも、どの時期だろうな、今の会話は。俺が居なかった時に行なわれたものだろうか?

「それを踏まえるなら、あなたが自分から言わない顔良の話は禁句の部分に該当するのでしょう? 喋れることなら喋ってくれるもの、一刀は」

「…………」

少し、自分でも目が細まったのが分かった。

俺の感じが変わったのを察したんだろう。華琳が顰めた顔から一転、楽しそうに顔を綻ばせる。

「その感じ、久しいわ。最近は愛らしいと思える一刀としか話していなかったから」

「……いつぶりに感じる? こういう俺」

「最初期が多かったわね。凪達が魏に来てからは、殆ど見なくなったけれど」

遠くから見ていることが多いと思っていたが、それでも華琳は俺のことをよく知っている。

なるほど。それはつまり、風の言う適度な接し方ってやつになるんだろう。深みにはまらず、自滅もしない程度の距離感を絶妙に保つという……禁則に触れない立ち回りが自然と出来ているのだ。

「その禁句を私は、自分から聞かないと律し、あなたとの盟約に組み込んだわ。だからこそ、今の関係性が築けてきたと思っているの」

おや、それを自分から言うか。

……本当に変わったな、華琳。以前の君なら、そんなことは口が裂けても言わなかっただろうに。

「華琳の性格なら、すぐに聞き出してきそうなものなのにね」

「どうしてかしらね……あの時は、それを行なってはいけないと思ったのよ。言えば答えてくれる。でも……それをしたら、二度と一刀は私を“見て”はくれない……そう、思わずにはいられなかったわ」

「…………どうだろうね」

そういう側面が出た可能性は、否定しない。

それに、見なくなるって単語がどの部分に掛かっているのか。話せば俺は余計な情報を漏らしすぎたとして、早期に消えていた可能性も出てくるし。

……さすがに、華琳が言っている意味は感情的な部分なんだろうけどさ。

「だから……顔良の話も、聞くかどうかは迷った。迷う、なんて言葉を口にしたくはないけれど、それでも一つずれれば、私は自分がやらないと決めた領域に踏み込むことになるんじゃないかって……そんな考えばかりが頭を過ぎるの」

華琳は肘置きに頬杖を付いて、足を組む。

「ただ……一刀の兵糧庫の話、顔良の亡霊、生きている麗羽達三人、孫家の動き…………後は、華佗の五斗米道とかいう怪しい医術」

「っ」

「それらを全部踏まえたら……顔良は、一刀が生かしたか、それこそ荒唐無稽に蘇らせでもしたのか。関羽が加担しているとは思えないし、何かしらの手段で連れて来ていたら、兵糧庫を攻める際に顔良の身体を持っていけばいいだけになる」

華琳が流れに乗って、持論を展開していく。

「当時は深夜で周りの状況は殆ど見えない。一刀が本気を出せば、まるで空を飛べる鳥のような動きも出来たわね。なら……森から奇襲する際、数分だけ間を取って、それこそ空を飛んで袁術の陣地に侵入し、孫家の連中に陰謀の一つでも刺激したのではないか? だから、孫家の動きが完璧すぎたんじゃないか……? とか」

全部予想で、空想の世界にしか過ぎないんだが。

「一刀、華佗、関羽以外の生き残りはいないから、他に真実を語れる人間はいない。それ自体は偶然かもしれないけれど……結果的に、全てが一刀の行いを隠蔽するように動いてしまった……だから、官渡での勝利は誰も納得のいかないものになった……なんて、机上の空論かしら?」



――――実に、見事な推理だ。



惜しむらくは、朱里のように証拠となる証言がないってことぐらいか。肝心なものは全て古い報告書だったり、それこそ奇襲する時、華琳は意識を失っていた。

だから…………俺の発言は、当然こうなる。



「空論だね」



俺は格好を崩して、木椅子の背もたれに寄りかかる。

「筋が通っている。何も知らない第三者が聞いたら、多分信じるんじゃないかな? そう思えるぐらいの説得力のある持論だったよ。だけど――」



「一刀。私の聞きたいことは、一つなの」



俺が余計な混乱を招く発言を重ねる前に、華琳が身を乗り出して、



「あなた――――死者を操れるの?」



混じり気のない。



興味でもない、詰問でもない。




ただ――――純粋な危惧として、俺に聞いてきている。


「何それ? 俺を心配しているの?」

「一刀。あなたのやってきた行いは、部外者にとっては全部『この際』って言葉に置き換えられてしまうのよ。だから分からないし、気付いたら行なわれている」

「よく言われるんだよね、それ。そう思われちゃうものなのかな? 自覚は無いんだけど」

「どこまでが軽口なのかは知らないけれど……もし本心で“自覚が無い”なんて口にしているとしたら……」

華琳がそこで、言葉を止める。


「…………?」


不思議に思って、華琳とそのまま視線を合わせて……ふと、その視線を自分から外した。


華琳の言葉と同時に、何か見られているような感覚が強まったのだ。


気がする、程度じゃない。確実に見られている。



「…………」



次の俺の発言次第では……少々まずいか。



「一刀?」


「あぁ、うん。そうだな……」


急に見られなくなったから、訝しがられたんだろう。

しかし、なんて答えたら良いだろう。急がないと。

……華佗の話をする分には、問題はないはずだよな? あの力はあくまで、この世界に元々あったものだ。

だとしたら、顔良の……何の話がまずいのか。

生き返らせた話ではないよな。あれは元々出来る。

逃がした話……? いや、劣化加速か?

それとも、この話自体を認めることがやばい? なら、最初から感じていなかったっていうのは……。


「一刀、こっちを見なさい」


「えっ……あ、華琳?」


視線を外したままだったことに、気付かなかった。

思考に没頭していたのもあり、気付いたら華琳は立ち上がって身を乗り出し、テーブル越しに手を伸ばして俺の頬に手を触れた。



「…………」

「…………」



俺と華琳の視線が――――時間にして、十秒近くだろうか。

華琳が不意に嘆息して、俺の頬から手を離して座り込む。

「……はぁ」

「……華琳?」

何か悟られただろうか?

「……華佗の五斗米道という力。気をつけた方がいいわ」

「え?」

華佗の医術?

「傷を瞬く間に完治し、五体が揃っているなら死者も蘇らせる……事実かどうかは知らないけれど」

「…………」

五斗米道の力……調べていたのか。

確かに、気にはなるだろうけど……でも、文献があるのか? 華佗は無いって言っていたし……あるなら、華佗だけじゃなくてもっと多くの人間が使えてそうなものだが。

「不思議って顔ね?」

華琳が一部の書類を手に取って、立ち上がって。

「一刀の能力も、華佗の医術も。ここまで助けられてきたのだもの。そこに不平不満を言うつもりはないわ。ただ……」


そっ……と、俺に寄って来て。


「自分を操ってはダメよ、一刀」


「……自分を、操る?」


鸚鵡返しになった。

華琳は何が言いたいのだろうか?

「死すら終着点じゃないとすれば、あなたのどこにも安息はないし、それどころかどこにも行けない。なのに、その部屋のどこにも出口がないのに、自分の動きには歯止めが利かないことになる。今まで“そうして”きたのかは分からないし、私は知らない。でも……そうであったとしても、そうじゃなかったとしても。自分を現象に置き換えるのは止めなさい」


そう、言って。



先程触れられた、右の頬に……軽く、それこそ触れたかどうかも分からないぐらいの、キスをされた。



「あなたが人間じゃなくて、現象、事象なのだとすれば、それはそうよね。風も桂花もその事象に飲み込まれるだけだわ。でも……私は二人と違って、あなたを人間としてしか扱わない」


「…………」


「だってあなたは、私を一人の少女として扱うのだもの……当然でしょう?」


それを最後に、華琳の温もりが俺から離れていく。



「……てっきり、顔良のことを聞かれてるんだと思っていたんだけど」

そう言うと、華琳は背を向けたまま足を止めて、

「多少の危険があれど、それなら顔良本人に話を聞けば済む話だわ。そこから生まれる魏の不和があったとしても……いえ、それこそ今更ね」

「それも踏まえて、俺が死体かどうかが分からない」

「あなたは生者よ。私の目には、そうとしか映っていない……だから、期待だって止まらないのかもしれないわ」



本当にそれを最後に、華琳はこの場を後にした。



「…………ふーむ」

腕と足を組んで、空を見上げる。

てっきり、問い詰めに来たと思ったんだけど。

「ただ、心配されたってことか……」



俺が死者を操っているかもしれない。



殺して、蘇らして。そんな禁忌を、都合よく扱っているんじゃないか?


延いては、それが俺自身に及んでいるのでは? 死んでも生き返れるんだし、どんな立ち回りをしたってどうだっていいだろって。



「…………それはさすがに、滅茶苦茶だよ、華琳」

でも、そう思われるぐらいのことをしているんだよね。

相討ちになってもいいような戦い方もしているし、そりゃ当然か。


にしても……だ。


踏み込める題材をあれだけ持っていたのに、踏み込んで来ない辺り、やはり分かっている。

これ以上は、華琳の言葉通り危険な領域だった。いつ踏み込むか分からない……そんなギリギリの、白線の内側での会話。


そして、その結果は……事象を扱う生者にしか見えない……だから、期待をしてあげる。風も桂花も上手く御して、魏を発展させろ。


そんなことを言いたいんだろうけど……まぁ、少なくとも桂花は殺さないでって感情が、華琳の期待って言葉に込められているんだよな。

それ自体はいいけど……五斗米道の話を切り出してきた。少々、気に掛かるな。

華琳も気にはなるだろうけど……華琳が自分から調べるだろうか? 確かに、春蘭のことは切っ掛けになったんだろうけど。

だからと言って、今更華琳が華佗に対しての振る舞いを変えることはないだろうし、俺の話を信じていてくれていると仮定もしたら、華琳が華佗にこれ以上の立ち回りを求めるとは思えない。

なら、どちらかというと、華琳が調べたっていうより……調べたことを華琳に報告した奴が居るって考える方が自然だよな。




「…………そろそろ、本当に目障りだな」




あの猫耳軍師。

十分に調べて、外堀を埋めてきている。


そして、それらを知って……華琳は俺に「誰にだって限界があるんだよ」って言いにきたんだ。そして、それを別の形で補っちゃいけないってことも。


「…………」


……しかし、直接手を下すとなると枷がある。


何かしらの方法で騙せると良いが…………それこそ、朱里の入れ知恵でも期待するか?


後手に回るだけっていうが、なんとも腹立たしいな。



「…………期待、か」


俺がこの思考に辿り着くことは、華琳にも分かっていたはずだ。


そのリスクを生んででも、この話をしにきた理由…………。



俺は、華琳が残していた書類を手に取る。


それを、めくると………………。



「…………なるほど」




不思議に思った。



どうして、喪失感がこちらを見ているのか。



しかし、それも合点がいく話だったのか。



こんな話の後だが、その書類に書かれている内容は、俺の胸を十分に躍らせた。



「……明後日までに準備を整え、定軍山に一個中隊を率いて出立せよ。目的は偵察及び蜀の動向を探ること……」



俺が口に出すと、思った通り強烈な眩暈がした。

吐き気を覚え、手足が振るえる。

だが、俺の顔は間違いないにやけたままだっただろう。

何を思って、今の会話の流れで決断したのかは分からない。

分からないが……でも、俺の言葉と動きで華琳は俺を定軍山へ向かわせる決意をした。

だからこその、途中の視線だったんだろうな。



そして……変わってきた――――いや、変わったと明確に分かった。



言い方が壮大にもしたくなるな、これは。俺が、今歴史を間違いなく変えたんだから。

以前のような行き当たりばったりではなく、昔から着々と準備を進め、歴史を操作することに成功した。



……ごめんな、華琳。否定はしたいが、君の言う通り……俺は死者を操作しているよ。



今、この瞬間から、君の隣に立つ秋蘭は生者であり、死者でもあるんだから。


ふらつく足で、俺は立ち上がった。美味しいお茶を飲ませてもらった礼だ。小銭を置いて、その場を立ち去る。



さて……まずは体調管理だ。その後、持って行くべきものを用意して……あぁ、朱里と関羽にも話を通さないとな。


加えて、定軍山でも確実に勝利をしなければならない。秋蘭の代わりになるつもりはない。




これから、忙しくなる。





続く


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