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適当広場

のんびり適当にがモットーです。多分

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あの想いと共に 第79話 

あの想いと共に 

第79話



「一刀!」

城門まで来ると、丁度華佗が慌てた様子で中から出てきたところだった。

「ごめん、遅くなった」

「無事だったか……何かあったか?」

俺の隣に並んで、一緒に城の中に入る。途中、門番に「ありがと」と伝えておいて。

「あったといえば、あったかな……急を要するようなことじゃないと思いたいけど……」

「手伝いは?」

「必要になると思う。ただ、今は……」

城門を潜って、中庭まで来る。

「あの二人、来てる?」

「一度来たぞ。だが、会いに行ったはずの一刀と会っていないというから……」

「慌てて、出てきたんだ?」

「どこに行っていたんだ?」

言うべきか、否かという部分であれば。

「ちょっとね……三姉妹のことで、後で相談がある」

言うだけ言っておくべきだろう。実際にどうなるかは分からないし、先に話だけでも通しておかないと。

「あいつらが?」

「具合が悪そうなのがいるんだよね……自分達では、妖術のせいだって言ってるけど」

「……後で聞こう。ここじゃあな」

誰の耳に入るか分からないからね。

「……それで?」

「一度来たが、俺が話すとすぐに出て行ったぞ。何かあったんじゃないかって。俺は俺で一度城の中を探して、外に出たところだったんだ」

「ということは、二人は町に逆戻り?」

「あぁ。行くか?」

「んー……」

こっちから探すというのは、それはそれで彼女達に都合良く考えられたりもしないだろうか。

「嫌だって顔、してるな」

「そうかも。話があるのは向こうで、向こうから来てくれるって言うなら、俺の方から探しに行く理由もないんじゃないかなって」

それに、朱里ならさっさと見つけてくれそうだし。

「俺の行動や思考は読めるだろ、あいつなら」

そう口にして、俺は城壁の上に行く。華佗も着いて来た。

「…………」

今日、ここで桂花に会ったんだよな。

上着のポケットには、まだ例の手紙が入ったままだ。この手紙が、良くも悪くも会話の焦点になるだろう。

それに……流れだけを考えたら、関羽にもこの手紙を見せることになる。それが良い方向に働くかどうか……。

「悩んでるな」

華佗はさっさと座り込んで、布に巻かれた鍼の数を数え始めた。

「敵が多くなることは分かっていたけど、こうまで悪い方向に動くとは思ってなかった……っていうのは、甘えかな」

「流れに沿って生きながらも、大事な仲間と国のために、流れを壊したんだ。しかし今度はそれをやると見せかけて、流れは沿わないって考えるとさ。目立つし、頭は出るし、目の敵にだってされる」

「目に止まる、鼻に掛かる……とにかく邪魔に思える訳だ」

「何よりは曹操だろ。俺から見たって、お前は実績こそ残してはいるものの、自分のことを優先にしてやりたい放題だ。それを見ても、曹操は納得してお前を自由に放し飼いしている」

「桂花が怒るわけだね……特別視しているように見える」

華琳は誰にだって同じように愛情を注いでいる。部下も、民も、国も。

でもその中で、俺は天の御使いとして、部下でもなければ、民でもない。国だって蔑ろにする発言までして。

「一刀から見て、どうなんだ?」

「何が?」

一応、聞き返しはするけど。

俺が華佗を見下ろすと、華佗は視線だけ一度こちらに向けて、

「曹操だよ。あいつが何を考えているか、俺にはさっぱり分からん。荀彧の敵対思考は分かる。愛紗や朱里の劉備のための敬愛も分かる。風の愛国心と忠誠から来る裏切りも、察せてはいるつもりだ。だが、それらを全て飲み込んででも覇道を行く曹操の思惑も、曹操が見ている目的地も、俺には想像もつかん」

「華琳の思想の終着点ね……」

そんなの、俺にも分からない。

そりゃ、最後には三国を平定して平和な世界を……というところなんだろうが。

この世界の華琳は……それも加えて、何か考えている節があるようにも思える。

最初に出会った時は、そんなの感じもしなかったけれど……。

「…………」

見下ろす町の光が、少しずつ消えていく。

消え、静まり、また明日には明かりが灯るのだろうけど。

まばらに散逸するような形で、人が生きている痕跡が消えていくのを見ると……まるで、少しずつ町が死んでいっているように見える。

「俺もさ」

「あぁ」

「華琳の考えていることなんて、分からないよ。最初に出会った時に、もっと注意深く見れたら良かったんだろうけど……自分のことと、未来のこと。そういったことばかりが頭の中を回っていて、華琳が何を見ているのかなんて見てなかった」

「気にならないのか?」

手を止めて、今度はちゃんと俺を見てくる。

俺は町を見下ろしたまま、

「気にはなるよ。なるけどさ……だからといって、俺にそれ以上のことはもう許されていない。華琳からは最低限の信頼を得てさえいれば十分だ。その後は……なるようになるさ」

「……俺達はいつだって、丸投げが趣味だもんな」

「だね……ん?」

ふと、大きな気配を感じた。

騒々しいとかじゃない。ただ……存在感がある、というか。

俺は後ろを振り返って、ここに上ってくる階段に目をやる。すると……。



「…………華琳?」



「あら、一刀。こんなところで何をしているの?」



しばらくぶりとも思えるような、そんな間があっても良さそうなものだけど。

「華佗も一緒じゃない。夕食後の涼みにでも?」

華琳は片手に本を持っていた。行軍に使うような技術が書いてあるものらしい。表題がそうだった。

「暇潰しだよ。待ち人がいてな」

「ふぅん……一刀も?」

「正確には、俺の待ち人だね。華佗は付き添い」

「そう」

「華琳は?」

「私は、今言った通りよ。公務も一段落したし、夕食も取ったし。読みたかった本も手に入れたから、気分を入れ替えるために涼みに来ただけ」

と言って、威風堂々とした立ち振る舞いでこちらに近付いて来る。

「でも、一刀とは忙しくてのんびり話している時間も無かったわね。ごめんなさい、暇なんでしょう?」

なんでしょうってことは、俺の近辺の情報はちゃんと仕入れているみたいだな。

「久しぶりの魏を謳歌させてもらっているよ。みんなも、俺が帰ってきてくれて嬉しいって言ってくれてるし」

「そうでしょうよ。あなたが死んだと知ったとき、町は分かりやすく落ち込みを見せたもの」

「それ、俺だけかな? 官渡では大勢死んだ。残っていたみんなの気持ちが沈むのも、分かる話だよ」

華琳が俺の横に立って、同じように町を見下ろす。華佗は俺達の会話には興味がないというように、鍼の手入れを続けている。

「それでも、私とあなたならなんとかして帰ってくる……と、思っていたのでしょう。でも現実は、多くの部下を失い、一刀という半身を失ってでの勝利だった」

「俺が、華琳の半身?」

「魏の、半身よ。民は私とあなたを殆ど同列に考えているわ。王と名乗るのが私で、その私をあくまでも補佐するという立場に甘んじているから、一応は私の方を上だと思ってくれているみたいだけど」

「穿った物の見方だよ、それ。後、甘んじてるって酷いな。結構頑張ってたつもりだけど」

「底の見えない物言いは相変わらずね。だから春蘭はムキになるし、桂花はあなたが目障りでしょうがない。違う?」

先程、華佗と話していたことを華琳の口から飛び出してきた。

…………良い機会、なのかな?

「違わないかもだけど。でもさ、俺と桂花があんな風に真っ向から対立していること、華琳はどう思っているんだ?」

「どうって? どうも思っていないけれど?」

少し、意外な声が返ってきた。

華佗も視線こそ上げていないものの、手入れしている手が止まっている。気にしているって、丸分かりだ。

「気に留め置く程度の問題ですらない?」

「どのような形にせよ、あなた達二人なら最良の形に落ち着けるでしょう。それぐらいの信頼はあるつもりよ」

随分、簡単に言う。

「信頼があれば、殺し合いをしていても問題ないか」

華琳は俺の言葉に、目を少し細める。

「もし、あなた達当事者の間でそのようなことが既に行なわれていたとしたら、それは本当に最悪の展開ね……」

でも、と付け加えて。

「私が何も知らずに、あなた達だけで決定的な命の奪い合いなんてさせないわ。妖術だの仙術だの体調不良だの……色々あるみたいだけど」



「なっ――――」

「華琳…………」



俺と華佗の声が、被る。

俺らのそんな反応を聞いて、ようやく華琳がこちらを見る。

妖術……は、いい。そこは分かっていたことだと思うし、直接的に掘り下げられる覚悟もあった。


だが、仙術って言葉がこうもあっさり出るなんてな……。


驚く俺を尻目に、華琳の顔に浮かぶ笑みは困ったよな、心配するような。そんな類のもので。

「こうして、直接私が口にすることはなかったでしょうけど……一刀にとっては妖術や仙術が必要不可欠だったということなのでしょう?」

「それは……」

「それによって生かされている命だもの。否定なんてしないわ……最近の桂花も、少し危なげだしね」

なのに、止めようともしない。

自分が嫌いな忌むべき力を使っている俺達だと言うのに。

「華琳……君は本当に、何を考えているんだ?」

俺が言うと、それこそ意外という顔をして。

「分からない? ……それとも、分からなくなった?」

「俺は…………」

「私は変わってないわよ。一刀も桂花も、私が信じ、求め、傍に置いていることに変わりは無いわ」

「だが、俺らは君が想う理想に反する行為に及んでいる」

「内部分裂、妖術と仙術、他国への繋がり、一刀の出生、その出生への恐怖から来る桂花の凶行……上げると、こんなところ?」

手を軽く上げて、なんてことないと軽くあしらう。

「だから何? 一刀……あなたが私を分からなくなってきたのかもしれないけれど。私は私で、あなたを分かるようになってきているのかもしれないわ。そういった齟齬が、今こうして行なわれている会話に繋がってくるんじゃないかしら?」

楽しそうに、笑いながら言う。

こっちとしては、何が楽しいのか分からないんだけど。

「でも、それもそうなのかしらね。官渡から涼州へ渡った経緯をただ報告書にまとめてもらっただけで、私はあなたから口頭で報告を受けた訳じゃない」

「らしくないと思っているよ。いつもなら、直接話せって言うのに」

「…………一刀」

少しの、間を置いて。


華琳は、飛びっきりの笑顔を、俺に向けてきて。




「もし、あなたでも桂花でも。どちらかを失うようなことになっても。きっと、それが最良の形。二人生き残って、私を支えるよりも……一人だけになった方こそ、魏のため、私のためになる。そうあるべきだと判断したから、二人から一人になった……そうでしょ?」




言っていることは、とんでもないのに。


華琳の笑顔は、屈託の無い、眩しいままだ。



「一刀も桂花も、自分が自分たらんとするために、対立している。なら、私がそのことにとやかく言う権利はないわ。私は私の言うことに従うだけの人形が欲しい訳じゃない。私の意を汲み取り、私と魏のために自らの意思で四肢と頭を動かす“人”が欲しいの」

「……何度も聞いてるよ」

「……例え、仲間同士の殺し合いになったとしても……その先が最高の国益となるなら、私に文句はないわ」

本当に、涼しい顔のままだ。

風が吹いて、それを浴びるように感じて……味方同士の殺し合いなんて、それこそなんてことのないように受け止めて。




「だが、曹操。それは王としてのお前の責務だろう」




しかし、華佗が異論があるようにここで口を挟む。

「かもね」

「なら、お前個人としての感情はどうなんだ?」

「私個人?」

鼻で笑うように言うと、

「勿論、最大限の努力はするわよ」

もう涼み終わったのか、一度手を上げて、そのまま来た道を歩き返す。

「どのような形であれ……一刀にも桂花にも。私の傍で生きていて欲しいなんて……そんなこと、当たり前のことでしょう」

去り際にそう言って、華琳は城壁から降りていった。



…………風が一度、強く吹く。



「これでもかっていう愛は、強く伝わってきたな」

「俺と桂花の問題は……まぁ、華琳ならそう捉えるか」

前の世界じゃ目立って殺し合うぐらいの対立は無かったから、こんな風に感じ取ることもなかったけど……。

「王ならではって感じはしたが。個人と国を天秤には掛けられないってことだろ?」

「そうだね……それに、気付かれていたというのもある」

妖術と仙術……確かに、桃香との戦いで大きくやりはしたけど。

「本人だけで気付いたって思うか?」

「どうだろ……桂花の入れ知恵があったと考えるのが妥当だけど」

しかし、そういった余計な情報を華琳には入れないようにすると思うんだよな……桂花の場合。

「…………ま、いいさ」

華琳のことを考えるのは、今起こっている最重要のイベントの後にしよう。

「いいのか?」

「いいよ。にしても遅いな。朱里なら、いい加減気付いても良さそうなものだけど…………あ、来たか」

町に向き直って見下ろしたままいると、俺が帰ってきた道をまんまなぞる様にして、朱里が歩いてきた。

一度城門の前に止まり、考え込む仕草をしていると……関羽もやってきて、少し話し合っている。



すると…………ふと、何かに気付いたように、朱里は上を見上げた。



俺と、目が合った。



「――ッ!! 一刀さまーーーーー! そこで待っていてくださいーーーー!!」



すぐに大声を出して、城門の方へと駆け出す。

関羽も一度驚いた後、こちらを見て……苦笑し、すぐに朱里の後を追いかけてくる。

「騒がしくなるな」

「明日、町には出れそうにないよ」

驚いた町のみんなが、こっちを見ている。これじゃ良い話の種だ。

「基本、俺は口を出さないぞ。その方がいいだろ?」

「うん。今回は俺が有利だろうしね」

それでも……隙を見せたら違う部分での引き込みも必ずしてくるはずだ。策が何もない訳じゃないだろう、朱里は。





     ◆  ◆  ◆





「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……か、かじゅと、しゃま……ごほごほっ!」

一気に駆け上がってここまで駆け上がってきた朱里は、俺の前まで来ると膝に手を付いて、肩を大きく上下させながら呼吸を整え始めた。

「どんだけ無理して来たんだよ」

一応、俺は朱里の背中を撫でてやる。あんまり効果なさそうだけど。

「それだけ、必死に探していたということですよ。戻っていたんですね」

そう言う関羽は、武器を持ちながら平然とこちらに歩み寄ってくる。汗どころか、息一つ乱れていない。

「入れ違いになったみたいだな。会いに行ったんだが、野暮用に巻き込まれてさ」

「だとして、自分では探しに来ない」

「用があったんだろ?」

俺は城壁の縁に座る。

「はぁー……はぁー……えと、その、か、一刀さま、わ、わたし……話したいことがあって!」

「手紙のことか?」

「で、ですです! その、手違いでもないんですけど、ちゃんと話すべきだったんです!」

慌てているのか、いつもの要領の良さが見受けられない。

見かねた訳でも無いだろうが、関羽が懐からさっさと自分の手紙を出して俺に手渡してくる。

「これは?」

「言われなくても分かっているのでは?」

……さっき、盗み聞きしていたことは知らないはずだ。

俺は嘆息して知らないという風を装いつつ、手紙を開く。



“久しぶり、愛紗ちゃん。元気にしているかな? こっちは色々問題もあるけど、楽しくやってるよ!”


“ごめんね、こういう手紙を出しちゃいけないって分かってるんだけど、どうしても気になっちゃって。朱里ちゃんも元気にしてる? 魏って栄えている印象あるけど、実際はどうなのかな。う~~……愛紗ちゃんが帰ってきていた時に、もっとお話聞いておけば良かったよ”


“曹操さん、悪い人じゃないけど気をつけてね。わたしは……みんなや周りが言うほどには、あの人のこと信じられなくて。あ! 困った時は、ちゃんと一刀さんに言うこと! 最近の愛紗ちゃん、なんでも自分だけでやっていきますーって感じだから、心配だよ。一刀さんに頼めば、嫌な顔とか文句とか言いながらもきっと助けてくれるから!”


“色々あるだろうけど、二人がいない間もこっちはちゃんとやっています。でも、寂しいな……次はいつ会えるんだろう? 一刀さんもそうだけど、二人だってちゃんと自分のことをしっかり考えてね。それからそれから――――”



…………実に、らしい文章だ。



特に、駄目なことなのにやってしまうくだりの辺りが、本当にらしい。

「本人から?」

「読めば分かりませんか?」

「…………悔しいが、分かるな」

この文章には桃香らしさが滲み出ている。こんな前後の話関係なくぶっ飛んで書きたいことをひたすら書くような奴もあまり居ないだろうし。

だが、自国の内情は楽しいとしか書かれていないところを見ると、誰かには見られながら書いたんだろうな。

「だから、朱里は手紙を返したって?」

「そ、そうなんです……こんなことしたら、私達の立場も怪しくなるし。だから、ちゃんと無事に戻るからそれまでお互いの連絡は無いようにって」

「…………」

確かに、やたらめったらと書いてはいるが、愛情に溢れている文章だ。本能のままに書かれているから、そう思えるんだろう。

「桃香さまのせいにするみたいで、あの時は言えなかったんです。そ、それに、一刀さまの前で桃香さまの話をするのも、あまり良くないと勝手に思っていて……だから、咄嗟に上辺だけを取り繕った言い訳ばかりになってしまって……だから、だから、わたし」

「今、結局桃香のせいにしているけどな」

「そ、それは! う、うぅ~~~~~…………」

困ったように顔を俯かせて、涙目になりながら口を尖らせている。

「それで、北郷殿はどこまで理解しておられたのですか?」

「何が?」

朱里をフォローするように、俺の情報を引き出そうとしてくる。

「何がも何も。そのままですよ」

関羽は俺の隣に座って、武器の刃を研ぎ始めた。

「町中を、武器を持って走り回っていたのか」

「あなたに何かがあったのかと思いまして。以前のように」

書庫の時か……そう言われると、言い返しにくい。


しかし……俺が、どこまで分かっていたのか、ねぇ。



……あることないこと混ぜながらいかないとな。



「実際問題、朱里の勝手な行動に腹が立ったのは本当だ。だから、突き放したし、そのまま殺そうかとも考えた」

「うっ……」

足腰の力が抜けるように、朱里はぺたん、と八の字座りでそのままそこにへたり込む。丁度、俺と華佗の間に入る場所で。

「どうせ桃香が原因だろうと思ったがな。それ以外で、現状俺よりも優先される事項はないはずだから」

「……分かっていても、朱里の素行は認められませんでしたか」

足を組み、膝の上で指も組む。

「分かっていたからこそさ。一言俺に告げるべきだったし、それがなかった以上、朱里はこれから同じことを繰り返し続ける。俺と言う優先事項があっても、自分の中で優先順位が高くなると、バレなきゃ大丈夫だと言い、平気で魏や俺を脅かすだろう。そんな奴を、どう信じるんだ?」

「そ、それは……っ」

「急がなきゃ、二通目が来るかもしれないもんな。それはいいさ。俺だってこんな手紙のやり取りを何度もされてたらたまらない。しかし……その時の言い訳が下手すぎてな。正直に話せばまだ良かったが」

騙し通せるとでも思っていたのか、こいつは。

「そのことは……本当に、弁解のしようもないです。意地というか……一刀さまに弱みを見せたくないっていう、変な感情も働いて……」

プライドが邪魔をしたか。

「意地や誇りがあるんだろ。なのに、こうして頭を下げている自分をどう思うんだ?」

「意地と桃香さまを理由に、反射的に反発して……でも、でも本当にわたしは、魏の内情も一刀さまのことも、一言も書いていません! どのようなことが道を壊すかどうかも分からないのに、そんなこと……」

どれも演技しているように見えるって言ったら、さすがに酷いかな。

しかし、桃香を出汁にしてまで嘘を吐く理由はないよな……関羽もこうして巻き込んでいる。

「…………関羽はどう思う?」

ふと、そんな言葉が俺の口から飛び出た。

「私……ですか?」

「朱里が嘘を吐いているように、何か画策しているように見えるか?」

刃を研ぐ手を止めて、じっ……と朱里を見るが。

「正直な話、分かりません。ただ、もし一連の行動のどこかに朱里が罠や虚偽を含めていた場合、私はそれも含めて全て桃香さまに報告します」

「へぇ……」

「愛紗さん……」

説得力のある物言いだが。

「仮に、私が朱里を殺しても。無様な失敗をして北郷殿を見殺しにすることになっても。それが蜀を出てから戻るまでに起こった真実であるのなら、私はそれを口にします。これ以上、あの方に隠し事をするのは耐えられない」

「次に会う時は、全てを話す時か」

「戻った時は……ですかね。戦場で会うこともあるでしょうし」

ちゃんと、言い直してくれる。やはり覚悟が違うか。

「朱里がどれだけ愚かだろうと、おぞましく汚いことに手を染めようと。その結果をどう判断するかは桃香さまであって、私ではありません。そして、報告する時に私と朱里の言い分に食い違いがあるとすれば、それは朱里が嘘を吐いていることになる。それが見抜けない方で無いのは……失礼、北郷殿が一番お分かりでしたね」

なんて、最後に煽りを入れて。言うことは言い終えたらしく、関羽はまた武器の調整に入った。

「慕われているじゃないか」

「その信頼に裏切らない努力は、して来たつもりです……」

そう言うが、自信はなさそうだ。

関羽が嘘を吐くことはないだろう。朱里が俺を欺こうとすることはあるだろうが。

しかし……こうまで言われて、逆にここで朱里をもう一度信じないというのは……信じても信じなくてもやることは変わらないが、単純な話、勿体無いだろうな。


それに…………抑止力か。


「…………」


「…………」


華佗に視線を送ると、どうするかは任せるという感じで一度視線を合わせて、また作業に戻る。

……ま、話はしておいた方がいいよな。

桂花の手紙……隠すよりは、見せておいた方が効果的だ。敵対するにせよ、警戒だけに留めておくにせよ。

「ところで、朱里」

「は、はい!」

可愛らしく座ったまま、びくっと身体を震えさせながら顔を上げる。

「君に見せたいものがあるんだけど、見てくれるかい?」

俺が笑顔を向ける。

「っ……」

緊張からか、プレッシャーからか。

固唾を飲み込んで、

「み……見ます」

冷や汗を流しながら、こちらを不安そうに見る。

「じゃあ、これだ。これが無かったら、俺はとっとと朱里の首を刎ねていたよ」

そう、形作って。


朱里は、僅かに首をかしげて、俺が取り出した手紙を受け取った。




続く


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