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のんびり適当にがモットーです。多分

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あの想いと共に 第78話 後編 

あの想いと共に 


第78話 後編



     ◆  ◆  ◆





中庭、城壁の上、城内、書庫と回ったが、どこにもおらず。

「…………ふむ」

まだ外に居るのだろうか? そろそろ日が沈むし、探してきた方がいいかもしれない。丸一日経ってから話してもいいが、それこそその隙に何があるか分かったもんじゃない状況だからな……。

俺は城門を潜って、町へと出る。

「これは北郷さま。もう日も沈みますが」

「任務でございますか? 陳留とはいえ、夜に単独行動は……」

門番に話し掛けられた。心配って感情が顔に出ている。

「ありがとう。でも、大丈夫だよ、すぐに戻ってくる。一応、月が真上に行っても戻ってこないようなら、華佗に話を付けてきてくれ。諸葛亮を探しに行ったって言えば、分かるはずだ」

「「は!」」

俺は軽く手を振って、すぐに町へと繰り出した。

工房街で見たのが最後だが……でも、さすがに居ないだろうな。この時間はもう殆ど人が仕事を終えて食事が帰宅か。どちらにせよ、人がまばらで用もないあの場所をうろつく理由もない。

「一刀?」

足を止めて、人混みがまだ多い大通りを見ていたらだ。

「霞……どうしたんだ?」

城に帰る途中だったのか、人混みの中から現れた霞に話し掛けられた。

「なんや、一刀も諸葛亮に会いに行くん?」

「諸葛亮……?」

意味が分からず鸚鵡返しをすると、霞がははは、と笑って。

「違ったか。いやな、関羽が食事をしに町に出る言うからついていったら、諸葛亮が飯屋に居てなぁ。ウチはよー分からんかったけど、関羽から見たら何かあったって思ったらしくて。ちょっと二人で話がしたいから今日は帰れってフラれてもーたわ」

「あぁ……」

その原因が俺って言ったら、怒られるかな。

「だから、ついでに一刀も励ましに行くんかと思ってたけど、ちゃうん?」

「そのつもりだよ。ただ、どの飯屋かまでは聞いてなくて困っていたんだ。場所を教えてくれないか?」

「おう、えぇよ。その代わり――」

「分かってる。関羽にはちゃんと埋め合わせをしておけって伝えておくさ」

「さっすが一刀! そういう細かい気配りが出来るの、良い男の証やで!」

「好意的に受け取っておくよ」

俺は霞から場所を聞いて、別れて。



そのまま、言われた場所まで歩いていく。



「…………ここかな」

大通りの真ん中にある、そこそこ賑わいがある店だ。炒飯が美味かった記憶がある。



その店の、一番奥の席に……座っている、二人の知り合い。



やれやれ……俺も話に加わりに行くべきかな。

……それとも、二人が何を話しているか、聞き耳を立てた方が良いだろうか。

「…………」

迷ったが、俺を抜いた二人がどういう会話をしているか気にはなる。



店の内装を見ると…………うん、出来そうだな。



俺は店の横の路地に入り、丁度窓がある場所まで来ると、そこに背を向けて寄りかかった。

「……いつまで黙っているつもりだ。そろそろ城に戻らないとまずい時間だろう」

賑わいはあるが、幸い二人の会話は開いた窓から聞き取れるレベルだった。助かったと思おう。

「はぁ……全く」

関羽の呆れ声が聞こえてくる。

「朱里がそうやって悩むのは、北郷殿が関係しているのだろう? なら、私にだって完全に無関係という訳ではないはずだ。良ければ、話してくれないか」

「…………うぅ」

くぐもった、辛そうな呻きが聞こえた。

「その…………えっと」

「あぁ」

そこまで言って、またたっぷりと間を空けた後。

「…………愛紗さん、桃香さまから、何か……連絡、来ました?」

「桃香さまから?」

最も気になっていたキーワードが、すぐに飛び出してきた。

案の定だろうか……? それとも……。

「今日の明朝、町を一人で回っていたら……な」

同意が関羽の口から。

ということは……やはり、桃香から関羽も何かしらの手紙を受け取っていたってことか?

「それが何か関係があるのか?」

「うぅ……そう、ですね。あるというか、無いというか」

観念した、という風に思いっきり溜息を吐いて。

「別に、一刀さまがどうこうって話ではないんです。ただ……一度だけ報告と、そしてもう送ってこないようにと。こんなこと危険なだけだし、嬉しいけれど……お互いの立場を悪くする。一刀さまにだって、嫌われちゃいます。そう思って、返信をしようと……」

「そこを、北郷殿にでも見られたか?」

「っ――――」

朱里が息を呑んだ様子が、手に取るように分かる。

「……お前らしくもないな。隙を見せるなんて」

「誰の気配も、音もありませんでした。間違いありません。ただ……それはわたしにとって都合の良い音を聞こうとしていただけだったのかなって」

「気がある北郷殿を疑いたくはなかった?」

「…………」

「馬鹿な話だ……」

しかし、と関羽は付け加えて。

「ならば正直に話したらどうだ? 何も言わないまま誤解を生んだ今の状況を続けているよりはマシだろう」

「弁解の機会は一度しかないです。そこを逃したら、もう次はない……だから、今必死に考えているんです。どうやったら、一刀さまにあれは魏にも一刀さまにも不利になるようなものじゃなかったって。どう言えば、それが伝わるかって」

「……問題の物は?」

「出した後で……もう国境に差し掛かっているかと」

「致命的だな……」

コトッ――と、茶碗がテーブルに置かれた音がすると、

「それに……嘘も、吐いちゃったんです」

「嘘?」

「はい……素直に、桃香さまのことだって言えば良かったのに。そうすれば、まだ……でも、口から出てきたのは平然とした態度のわたしと、一刀さまが知っていそうなその場限りの情報という嘘が連なったものばかりで」

「何故、桃香さまのことを? あの人達のことだ。桃香さまだろうが、北郷殿だろうが……そこに気を使う必要性はないだろう?」

「今思えば、無かったのかもしれません。でも……一刀さま、桃香さまの話題を口にする時、いつもと違う表情をするんです。渋いっていうか……」

「……気に障る?」

その物言いに、俺の眉がぴくっと反応したのが分かった。

あぁ……これかな? 確かに、俺は桃香を認める訳にはいかないしな……。

「気付いていたんですか?」

「私には桃香さまの仰りたいことは理解できなかった。でも……北郷殿は恐らく、分かっておいでなのだろう。だから、二人はいつも反発し合っている。そう、私には見えている」

「同じです。わたしも、そう見えていて……着いて来た理由の一つでもあるんですけどね。一刀さまの問題を解決出来るようになったら、桃香さまの話していることも、より分かるようになるんじゃないかなって……。そういうのもあって、普段から一刀さまの前では桃香さまの話題は控えるようにしているんです」

「その戒めが、咄嗟に邪魔をしたか」

「……です」

「一度決めたら、何でも確実に実行してしまう悪い癖だな、朱里の場合。それならば尚更、和解にしに行かなければならないだろう。こういう話は、時間が経てば経つほど溝が深まる」

「そ、それはそうなんですけど……先程も言った通り、どうしたらいいのか――」

「余程混乱しているようだな。さっき、私が言っていた言葉を忘れたのか?」

「愛紗さんが……?」

何やらごそごそという音が聞こえて。

「私のところにも、届いたと言っただろう。これが証明の役に立つはずだ」

「あ…………」

本気で間の抜けた声が、朱里の口から漏れて。

「印などないが、それでもあの人ならこれが桃香さまご本人が書いたものだと分かるはずだ。ただでさえ、水と油だからな」

「……嫌いだからこそ、その嫌いな部分を感じ取れるってことでしょうか?」

「そんな部分が無くても……北郷殿は、桃香さまを想っておいでだろうがな……」



だから、認められない――――なんて、口にして。



「私も一緒に頭を下げよう。失態は一度限りだろうし、この場でのこういった失態は連帯責任だ」

「そ、そんな! わたしの失敗で、愛紗さんにご迷惑を掛けるわけには――」

「朱里がやっていなかったら、私が同じ過ちを犯していた可能性もある。とはいっても、私は朱里ほど頭が回るわけじゃないから、一応相談をしてからと思っていたがな」

「うぅ……す、すみません。先走ってしまって」

「……朱里。我々は確かに危うい立場だが、手を取り合えるところでは取り合おう。場所が場所だし、相手が相手だ。必要ならばお互いの寝首を掻くだろうが……それ以外での遠慮は必要ないだろう?」

「……………………そう……ですね……」

「……歯切れが悪いな。何かまだ問題でもあるのか?」

「いえ……ただ、今のわたしは……」

「…………」

「…………」

「……言えない問題か。なら、聞くまい。私にだって、朱里に言えないことがあるからな」

「すみません……」

「謝るな。このことで謝っていたら、いつまでだって謝り続けることになる」


朱里の問題……ねぇ。


……華佗とのあれかな? 本来の性能を十分に発揮出来ないどころか、下手したら約束事を覚えられないって状態だとな……。


「だが、今回のこれは手を取り合えるだろう。だから、一緒に謝りに行こう、朱里。大丈夫だ、条件が揃っているなら、あの人はちゃんと許してくれるさ」

「はい……ありがとうございます、愛紗さん」

ぐすっ、と嗚咽のようなものが聞こえて。

「泣くな、朱里。お前は一人で抱え込みすぎだ。咄嗟に私を利用するという判断が出来ないぐらいにはな」

「はい……でも、もう大丈夫です。愛紗さんのおかげで状況を好転できそうなので、泣いてなんて、いられませんもんね」

「というより、朱里は結構な泣き虫だったよな。最近はご無沙汰だった気がする」

「ひ、酷いです愛紗さんっ。わ、わたしは別に泣き虫って訳じゃ……」

「気を張っている状況だからな、お互いに。だからこそ、たまにはこうして二人で会って、蜀の空気を思い出した方が良い。魏の空気は……やはり、馴染めそうにないからな」

「それは……わたしもです。一刀さまにも……ここの空気は、合わないと思うんですけどね」

「どのような大事を内包してでも、あの人には成し遂げなければならないことあるのだろう。気に食わないが」

「ご自身の身体の安否を無視してでも、ですもんね。早めになんとかしないと……」



…………話は、これぐらいか。



朱里のあの話……風との会話通りになったな。



関羽巻き込んでということを考えると……恐らく、本当のことだろう。



なら、後は桂花の部分の確証をどう得るかだが……。



このまま朱里にこの手紙を見せても良いものだろうか? 関羽もその場に居て、ということにもなるが。


…………難しい問題だ。桂花の思想や理想がどこに向かっているのかは分からないが、それでも朱里と明確に敵対したい、という意思の表れだと思うし。

でも、敵対させなかった場合はそれはそれで桂花に都合良く事が運ぶ要素が増えるということにもなる。

どっちに転んでも……だよな。それが狙いだったのかどうかはさて置き。

「うん、今から行きましょう、愛紗さん! 出来れば、一刀さまを夕食に誘って、人が少ないところで話をしたいですね」

「夕食か……そういえば、最近北郷殿が食事を取っているところを見てないな」

「そうなんですか?」

「あぁ。華佗が居るし、最低限の摂取はしているだろうが……」

「ふぅん……なんか、それも変な話ですね」

……きな臭い話になってきた。

朱里は朱里で、俺は俺で身体に欠陥を抱えている。お互いに、バレないようにするのが大変だ。

壁から背を離して、俺は大通りには出ないようにして、店から離れて別の通りに出た。これで、二人と出くわすことはないだろう。

「ふぅ……」

関羽にバレるかもと思ったが、朱里の様子を思った以上に気にしていたのか、悟られずに済んだ。

盗み聞きしたこと事態は悪いことだと思うが……風達と話した予測があるにしても、やっぱり心のどこかに不信感を持ってはいた。

そうやって考えるなら、正面からの話し合いだと、俺はすぐに納得が出来なかっただろう。冷静なまま二人の話を聞けて良かったと思う。



ただ……な。



全部を全部、信用しても良いだろうか?



それこそ、関羽を巻き込んだ上での策を朱里が実行しているという可能性も…………疑心暗鬼になりすぎか?



……頭の隅には置いておかないとならない。少なくとも、俺に見せる顔は味方に近いだろうが……背中を向けた後の顔なんて、見える訳がないんだ。





……今は少し間を置いて城に戻って、何気なく二人から話を聞こう。知らないフリは得意だ。


その時の反応も、よくよく注視しないと……。

「…………ん」



しかし――――だ。


俺は何がこんなに気になっているんだろうか?



何故、こんなにも釈然としない?




風の話は最もだし、同意出来る部分しかない。


先の内容も、朱里が迂闊だったってだけだ。俺の神経を逆撫でしたくないがための態度が、逆に焚き付けに繋がったというだけ。



だけ……なんだが…………おや?



ガチャンッ!! ――――と、大きな物音。



目を向けると、飲食店の一つだ。そこから――――、



「地和?」


「っ……あんた……そうか、戻ってきてるんだものね」


店から出てきたのは、地和だった。

俺を一瞥してそう答えると、すぐに走り去ってしまう。

ただ……走り方がおかしいな。ふらついているというか……。

「ま、待って地和姉さん! あぁもう……っ!」

「人和も。どうしたんだ?」

「一刀? どうしたの、こんなところに」

「帰り道だよ。何があった?」

言うと、置くから天和も出てきた。

「むー……地和ちゃん、大丈夫かなぁ」

「天和」

「あ、一刀。どうしたの? 新しいお仕事? でもごめんね、今は……」

「いや、そうじゃないけど……」

再び、俺は人和を見て説明を求める。

「えっと……最近、地和姉さん、体調が悪くて。無理に力を使った反動だと思うんだけど」

「力の反動?」

前の世界では、そんなことはなかったが……。

人和が近付いてきて、小声で言う。

「涼州で、色々やったでしょ? あれ……結構な無理をしたのよ。最近、良くなっては来たんだけど」

「ようやく起き上がれるようになったし、ご飯食べにいこーってなったんだけど、まだ具合、悪かったみたいなの。お店で倒れちゃって……すぐに起き上がったんだけど」

「ようやく起き上がれるようにって……かなり重症じゃないか?」

初耳だ。担当を外された俺に入ってくる内容ではないのかもしれないが。

「……まぁいい。で、居た堪れなくなって走り去ったのか」

「うん……」

人和は一度店内に戻って、頭を下げている。店主も少し困惑していたが、人気者の人和達だと気付くと、すぐにかしこまったようにへこへこしだした。

「あの分なら、大丈夫かな……」

「地和ちゃん、追いかけなきゃ……多分、部屋に戻ったと思うし」

天和もようやく落ち着いたのか、すぐに走り出して行った。

「……力の反動」

涼州のアレが原因だとしたら、その元凶は俺だ。前の世界でなかったというのも頷ける話。




……一度、俺自身も見に行った方が良いだろうな。酷そうなら、華佗も呼ぼう。嫌がりそうだけど。



善かどうかは分からないが、急いだ方が良さそうだ。





     ◆  ◆  ◆





俺は昔から馴染みのある、彼女達の部屋がある建物へとやってきた。

部屋まで行くと、扉は開けられたままだった。この階は貸しきっているとはいえ、些か無用心だな。

「大丈夫か?」

「あ、一刀~。来てくれたんだ?」

「あぁ」

天和の笑顔を見て少し安心しつつ、扉を閉めて、部屋の中に入る。

「…………別に、来なくて良かったのに」

寝台に横たわるのは地和だ。具合が悪そうに、顔を隠すようにして腕を乗っけている。

「悪いんだって?」

「あんたのせいよ……」

「……すまない。弁解の余地はないよな」

俺は寝台の傍まで行き、顔を覗き込む。

顔色は……確かに、良くないな。部屋が暗いせいもあって、よりそう見える。

「いつからだ?」

「戻ってきてからかなぁ。最初は大丈夫だったんだけど、急に――」

「天和姉さん! ……言わなくて、いいから」

大きな声を出したからか、苦しそうに頭を押さえる。

「無理するな」

「うっさい、馬鹿! 全くもう……」

「…………」

取り付く島がないとは、このことだな。地和が居る場では、まともに話にならないだろう。

ここは天和に任せて……人和を探しに行くか。


と、思ったら、部屋の扉が開く。


「姉さん達」

「あ、人和ちゃん、お帰り~」

人和は包みを二つ持って、部屋に入ってきた。

「はい、これ。お店の人から貰ってきたわ。いっぱい食べて、元気になってくださいって」

「わぁ、ほんと~! やったぁ!」

喜びを見せる天和に対し、地和も苦しそうながらも笑顔を浮かべる。

「ふぅ……迷惑、掛けちゃったわね……ありがたく、頂くわ」

そういって身体を起こす。

「…………」

俺は人和に目配せした後、部屋の外へと向かう。

「一刀? どうしたの?」

「少しな」

そのまま部屋の外に出ると、人和は察して着いて来た。天和はそのまま、地和と食事に勤しんでいる。



「……それで?」



部屋の扉を閉める時、地和がこちらを睨んでいたが、今は気にしていられない。

「戻ってきてから、すぐよ。跳ね返しね」

「跳ね返し……使った分の代償か?」

人和が頷く。

「妖術って、普通ならあり得ないことをあり得るようにする事象なの。だから、何かしらの代償がある。でも大体は、少し休めばなんとかなるのよ。物を媒介にする場合もあるけど……そんな危ない術は使ってないし。私達が使う術は、せいぜいちょっと疲れるぐらいなの」

「いつもは、だろ? 涼州のアレは違った」

「……それだけ、一刀かどうかを気にしたのよ。私も、姉さん達も」

潤んだ瞳で見上げてくる。心配は嬉しいが……。

「結果として、この状態はまずい。仕事に支障は?」

「涼州の一件を元に、休ませてもらうって言ってたでしょ? だから、まだ大丈夫よ」

「だが、そろそろその引き伸ばしも限界だろう。今の担当にはなんて言ってあるんだ?」

「…………まだ、何も言ってないわ」

何も言ってない? 何故?

「どういうことだ? 言ってないって……気付かれるだろ、普通」

俺は驚いたが、それこそ人和は嘆息して、

「必要以上のことはしないわよ、今の人は。一刀のように定期的に見に来てくれる訳じゃない。華琳さまからの言伝があれば現れて、無かったら現れない。何かあるなら、私が自分から言いに言っているもの」

「……なんだそれ」

それじゃ、三人の負担も大きくなるし、何より彼女達のステージ活動自体が少しずつ滞っていくじゃないか。手間が増えているってことなんだから。

「本当に色んな意味で、私達は一刀に帰ってきて欲しいって思っていたの。仕事の援助もそうだし、精神的な補佐もそうだし。今の担当の人が十人いたって、一刀一人には到底及ばないわ。ただの木偶よ、あんなの」

僅かに怒りを吐露して言う。それだけ、言われただけの仕事しかしてないってことか。

「だから、地和姉さんが無理にあんなことをしたのも……それを止めなかったのも、何より一刀が本人かどうかを知りたかったからよ。本人だったら、無理矢理にでも戻ってきて貰おうと思っていたわ」

「物騒だな……俺のせいだろうが」

だが、それで地和が倒れていては本末転倒な気もするが。

「跳ね返しが来るのは分かっていたわ。でも、それを差し引いても今後の活動を円滑にするなら、一刀が戻ってくる可能性に賭けたの。結果的に必要がない行為だったけどね」

苦笑を返されても、俺は目を逸らすことしか出来ない。

「……これから、どうする?」

「時期的に、まだ魏が動く時ではないでしょう? 今は呉と蜀の動向を探っているのでしょうし。向こうの動きが決まってからでも遅くは無いわ」

「自発的にはだろう? 華琳からしたら、十分な休暇を与えたと思っているはずだ。その上、地和の不調はあの子には伝わっていない」

「……伝えてないのよ。担当が来れば、勝手に伝わったでしょうけどね」

「何故? 理由は話せないとは思うが、それでも今の地和に無理をさせたら、長期的に物を見ると仕事が成功しにくくなるだろ」

「齟齬が出てくるものね。でも……単純な話で、地和姉さんが医者に掛かりたくないのよ」

「医者に?」

妖術が原因だからか? そんなの、使ってなければ分からないと思うが……。

「一刀が考えていること、何となく分かるわ」

しかし、人和は少し悲しそうに首を横に振った。

「でもね。医者って、なんでも調べているもの。人を助けるために、外法を学んでいる人だって居る。そんな人が見れば……姉さんの体調不良は、妖術だって分かるの。だって怪我もしていないし、過労や生理にしては長続き。その癖、普段は怪しい舞台をやっている……邪推もしちゃうでしょ?」

「舞台は確かにそうだが……」

「普段は見ない光景だからこそって部分よ。分かっている人だってきっと居るわ。でも、それでも楽しいし、日常にある苦痛から一瞬でも解放されたいって思ってくれる人が居るから、こうして私達は需要がある」

「…………まぁ、な」

否定は出来ない。人はいつだって、多かれ少なかれ“いつも”じゃないことを望む側面がある。

俺だって……当たり前じゃないいつもが欲しいから、こうしてここにいるんだし。

「せっかくここまで来たんだもの。極力、そういった危険は省いていきたいの。それは地和姉さんの意思でもあるし、私達の総意でもあるわ」

「だが、その結果として悪化の一途を辿ったらどうする?」

「私も天和姉さんも、妖術が使える。それを使って、お互いの状態をある程度は把握できるわ。だから、それで危ないって思った時に、医者に頼むようにしているの」

「聞いたことないぞ、そんな話」

「……こんなことがなかったら、していないもの」

人和が目を伏せる。

……リスクを極限まで省く代わりに、自分達で苦労を背負い込む。

しかし、危なくなったら医者に見せるって……それこそ本末転倒じゃないかとも思うが。



…………俺に、人のことは言えないか。



「最低限の部分をお互いに補い合えているなら、良いさ。俺はもうお前らの担当じゃないし、口出しが出来る立場でもないからな……」

「その話なんだけど、まだ華琳さまから話は来ていないの?」

「ん?」

何がだろう?

「私達、一刀が戻ってきたと聞いて、すぐに嘆願書を出したの。担当を一刀に変えて欲しいって」

「…………聞いてないな」

今の俺に与えられているのは、休暇の一言だけだ。

そう言うと、人和は目に見えて落胆した様子を見せた。

「そう……どうにか、ならないのかしら?」

「華琳が何を考えているかは分からない。遠目には見ているし、お互いに挨拶ぐらいはするが……長い会話なんてのは最近してないからな」

「っ…………」

辛そうに、口を閉ざされた。

…………うーん。

「ただ、話が俺に回ってきたら、すぐに受けるよ。ただでさえ面倒な三人組だ。そこら辺の奴らじゃ扱いきれないだろ」

「本当? 一刀も……最近、忙しいんじゃないの?」

「休暇ばかりだって言っただろ? 余裕さ」

本当は朱里や桂花のこと、定軍山や秋蘭のこと。忙しいのだが、今は他に言いようがない。

「そうなんだ……じゃあ、本当に待っているわ。一刀が戻ってきてくれれば、地和姉さんを万全まで回復させるまで時間を作ってくれそうだしね」

少しいつもの調子が戻ったのか、眼鏡の位置を直して笑みを浮かべる。

「体よく扱うのかよ。変わらないな」

「お互い様でしょ、それは。持ちつ持たれつよ」

違いないか。そういう関係だしな、俺らは。

俺は一息ついて、話の流れを切ると。

「もしまずくなったら、すぐに俺に言え。華佗を連れてくる」

「よく一刀の傍にいる、男の人?」

「あぁ。あいつ以上の医者は、今のこの世にはいないよ。あいつに治せないなら、もう誰にも治せない」

「あなたがそこまで言い切るってことは、本当にすごいのね」

あぁ、すごい。すごすぎて、本来なら俺の頭なんて上がらないくらいなんだ。

「……とにかく、無茶はするな。今の担当に話が伝わってないってことなら、俺から華琳に言う訳にもいかないが……」

「それは分かっているわ。幾ら一刀が前の担当だとしても、関わりのない人に情報を漏らすようじゃ話にならない……大丈夫よ」

本当に大丈夫なんだろうか?

前の世界で無かったというのもそうだが…………こうして話しただけじゃ、情報が少ない。不安が残る。

残るが……だとしても、俺が首を突っ込んで良い話でもない。

「歯痒いが……そろそろお暇するよ。今の状況で、この場にいることを知られるのは良くないだろ」

「そうね。でも、ありがとう一刀。こうして会いに来てくれて」

笑顔を浮かべる人和に、俺も出来る限りの笑みを返して、

「次は、三人が明るく話が出来る時に来るよ」

俺は背を向けて、すぐにその場から移動した。


建物を出る時、周りを確認したが……特に気にしている人物もいなかったので、そのまま通りに出る。


やれやれ……時間が掛かったな。

だが、現状の確認が出来ただけでも良かった。地和の体調は気になるが……徐々によくなっているということだし、今は無理に掻き回さない方が良いだろうか?

華佗に見せてやりたいが……俺からといったら、絶対に嫌がるよな、地和。

それに、一応三人の中でルールがあって、それに沿って動いているみたいだし……快復には向かってるんだから、そこを壊してまで行動する必要はないか。


「……ん?」


疲れたなと思って、上を見上げたら――月が、真上に差し掛かろうとしていた。

やばいな、思っていた以上に時間を食っていたか。

すぐに戻らないと、衛兵と華佗が心配して探しに来るだろう。朱里を探しにいったといっている手前、変な騒ぎになっても困る。


俺は急いで、城へと戻った。



地和達のことも気に掛かるが……まずは、朱里の問題をクリアしてからにしよう。






続く



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