05«1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.»07

適当広場

のんびり適当にがモットーです。多分

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

category: スポンサー広告

cm --   tb --   page top

あの想いと共に 第77話 前編 

あの想いと共に 

第77話 前編



昼は食べていないし、食べるつもりもなかった。

なのだが、

「あ、たいちょー! たいちょーなのー!」

「隊長……どうも」

ある場所に向かっている最中、街中で沙和と凪の二人に話し掛けられた。

「よう、二人とも。仕事中か?」

別に俺自身隠すこともないので、普通に足を止めて話を始める。

「今は休憩中です。沙和と一緒に、昼食を取ろうという話になりまして」

「そうなの! 隊長もどう?」

「あぁ、俺は……」

もう取ったからいらない――と、言う前に。

「申し訳ありません、隊長。最近の部隊構成について、お話がありまして……お時間があるなら、相談に乗っていただけないでしょうか?」

無表情……ではなく、本当に悩んでいるみたいだ。慣れていないと分かりにくいが、困った顔をしている。

「あぁ、裏路地のお話?」

「そうだ。人員を割きたいが、どう割いたものかと思って……」

裏路地……ねぇ。たまに変な奴がたむろしているが、それは今も変わってないのか。

「構わないけど、俺で何か助言出来るかな? 現状、大したことは知らないぞ」

「本当ですか!? あ……えと、い、意見だけでも伺えればと思って」

俺が了承すると、思わず大きな声が出た凪がすぐに顔を真っ赤にして、言いなおす。

沙和はそれを見ながらにやにやしつつ、

「ふふーん、そっかー、凪ちゃんそっかそっか」

「な、なんだ沙和! 何がおかしい!?」

「べっつにー? そうだ、ねぇねぇ隊長! せっかくだし今日のお昼ご飯、隊長の奢りがいいなー♪」

「始まったな……」

何かにつけて、すぐに集ろうとするんだから。

「……ま、いいよ。金も時間もあるしな。どこにする?」

「わーい! やったなのー!」

「よ、よろしいのですか? 自分達の分は、ちゃんと自分で……」

「大丈夫。ほら、道の真ん中に居ても邪魔になるし、さっさと移動しよう」

好奇の視線が、既にちらほらとたまってきている。その大体の対象は俺で、いまだに帰ってきたことを喜ぶ声や、逆に生きていたのかと不思議がる声も多い。

「もー! 凪ちゃん、どうしてそういう風に自分の気持ちに正反対のことを言うの!?」

「べ、別に私はそんな……だ、大体沙和! お前も毎回隊長に食事を奢ってもらうんじゃない! 恥ずかしくないのか――」

なんて二人の言い合いを目にしながら、俺は二人の後ろについていった。





     ◆  ◆  ◆





「なるほど、参考になります」

食事を一通り終えて――俺は何も食べなかったが――凪が納得したように頷く。

「これだけ領地が広がった上で、流民の数が未だに陳留まで流れてくるってのは驚きだが……その分、彼らは安全と安心が欲しいんだ。本拠地のここならば大丈夫だろうってね。かといってそれらを全て鵜呑みにすると、どこに斥候がいるか分からない……が、今のまま手付かずの状態もまたまずいから」

「季衣ちゃんと流琉ちゃんに手伝ってもらうんだね!」

お腹いっぱい、って顔をして満足そうな沙和。俺は苦笑しつつ、

「親衛隊は強いが、その分訓練に明け暮れてて町を良く見て回ってないことも多い。たまには市政も兼ねて歩かせた方がいいよ。春蘭も納得してくれるさ」

「分かりました。裏路地は迷路のように入り組んでますし……親衛隊の手があれば、とても助かります」

「怪しいからって、全部しょっぴいたらダメだぞ。何をやりたいのか、どこから来たのか、何をしにきたのか、それぞれ聞いて……。農作業したいなら回せばいいし、兵役をしたいなら親衛隊に一度揉んでもらうぐらいでもいい。付いてこれそうならそのまま取り上げてやればいいしな」

「ただ来ただけって人はー?」

「徹底的に身分を洗って素性を……という話だが、俺らじゃ難しいよな、そういう部分。桂花か稟に頼むしかない。風は今俺のことで手一杯だから余裕がないし」

「桂花さまも……余裕があるようには思えません」

「そうなんだ?」

そこら辺、俺は知らない。知ろうとも思ってないし、知ろうとして動けば桂花自身がそれを徹底的に隠すだろう。気にならないといえば嘘だが、今は定軍山関係で動かないと。

「じゃあじゃあ、稟ちゃん? 忙しそうだけど」

「忙しいのは分かるが、後回しに出来る問題じゃない。似たようなやつを後回しにしていた俺が言えたものじゃないが」

「あの時の隊長は、色々と心労が加わっていただけです。何も分かっていない奴らが、好き勝手に言うから……!」

途端に憤慨する凪だが、しかしあの老臣が言っていた内容も別におかしい訳じゃない。

「彼らは彼らで、俺と言う異分子が台頭し続けることに不安を覚えたんだよ。華琳は何も言わないから、誰かが言わなきゃならないってね」

「華琳さまの考えに間違いなんてないの」

「そう思うが、口を出さずにはいられないぐらい、俺と言う要素が異質に見えたんだろ。凪や沙和は俺のことをよく知ってくれているけど、彼らは普段篭りきりで政務に励んでいるから……お互いに、触れる機会を今度用意した方がいいかな」

笑顔で言うと、二人は嫌そうに首を振った。俺だって嫌さ。

「でもでも、隊長が元気そうで安心したの!」

「もう食事を取られていたみたいで……申し訳ない限りです」

「いいって。俺も二人と話したいと思っていたからさ」

そうやって心配してくれたり、それでも笑顔を向けてくれるこの子達は、俺の癒しだ。

だからこそ、過度な部分での心配はさせたくない。

「…………さて、それぐらいかな? 他に用がないなら、そろそろ行くよ。二人も休憩時間が終わるだろ?」

「はい。今日はありがとうございました、隊長」

「何かあったら、相談しにきてくれて大丈夫だ。基本、今は暇だからな」

言うと、沙和が頬をぷくーっとむくれさせて、

「隊長ばっかり休み多くてずるいの! 沙和も隊長ぐらい休みがほーしーいーのー!」

「華琳に言ってみるかい? 俺から伝えておくけど」

「うぐっ……そ、それは、遠慮しておくの……」

「……なるほど、華琳さまの名前を出せば、沙和も言うことを聞くのですね」

「うっ、な、凪ちゃん、それはあんまりなの~」

「ま、仲良くな」

俺は立ち上がって、二人に手を上げてから店を出た。

余計……でもないが、道草を食ってしまったな。

しかし、この二人が二人だけで行動しているということは……やっぱり、今日は休みになったのか。


なら、今は町の工房にいると思うんだが……。





     ◆  ◆  ◆




俺は、自分では滅多に足を向けない場所――武器工房にやってきていた。

扉を開けて中に入ると、俺の顔を知っている鍛冶師がすぐに頭を下げてくる。

俺は笑みを浮かべて作業に戻るように挨拶して、中を見回した。幾つかの炉があり、今まさに武器を撃ちつける音と、工房特有の熱気が肌を焼くように刺激してくる。

ここは相変わらずだな……と思いながら、俺は腰元に手をやった。

そこには当然、何もない。



腰元が寂しい今の俺だが……その寂しさを解消するために、今頑張ってくれている奴がここに――――いた。



「真桜」

「ん?」

奥の奥。等間隔で並ぶ作業場とはずれた、外れに外れた場所。

そこで汗を流して、右手に持つ武器の切っ先を天高く上げてその出来栄えをチェックしている真桜が振り返って……すぐに嫌そうな顔をする。

「……隊長やん。どしたん?」

「今日、急遽休みになったって聞いてね。来てると思って」

「これ?」

用件はすぐに把握したらしく、今まさに手に持っていた武器――紅桜の切っ先をこちらに向けた。

「あぁ。もう一週間にもなるし。状況を聞こうかと」

「んー……」

赤黒い刃を人差し指と中指で挟み、何かを塗り込むように刀身を滑らせていく。

「切れ味と硬度なら、時間もあったし新しい素材も試したしで、上がったで。んでも……」

「でも?」

俺は真桜に手招きされて、炉の前に座る真桜の隣に立つ。更に熱気が強くなるが、真桜はもう何時間もここで頑張っているんだし、数分もこの場にいない俺が弱音を吐くわけにはいかない。

「これ、前にさ。隊長どんな風に使ったん?」

「どんなって……」

間違いなく、呂布との戦いのことを言っているんだよな……気になるのは分かるが。

「前の時もさ。さすがに今以上ではないけど、結構頑張ったんやで、ウチ。でも……隊長が一人で戦って、結果は呂布に負けて……どんな風に負けたん?」

「刀身のことを気にしているんだろ?」

「…………んー」

てっきりそのことかと思ったが……煮え切らない態度だ。

「他にも何か気になるのか?」

「いや、刀身っちゃ刀身もなんやけど……先にそっち話しよか。なんか、おかしない? これ、柄だけが戦場に落ちてたんやで。根元から折れたとかならまだ分かるけど、柄の中に入っていた刀身まで綺麗さっぱりなくなってるやん。かといって、抜け落ちたって訳やないみたいだし」

真っ赤な刀身が周りに落ちて無かったよ、と真桜は言う。

「……そうなのか」

確かにあの時、紅桜はあの薬の効果に耐え切れず、霧散した。俺が確認できたのはそこまでだ。

塗ったのは刀身だけだったから……効果も刀身だけに留まったということか。

「そうなのかって……でも、刀身だけやなくて。柄もひび割れてて。握力で握りつぶしたみたいに」

「って、そっちもか」

劣化加速で身体が強化されていたから……無我夢中で戦っていたし、そういうこともあるだろうな。

と、思案する俺の顔を目を細くして真桜が覗き込んでくる。

「なぁなぁ隊長。ウチ、未だに隊長の全力っちゅーもんが分からんのよね」

「だろうな」

俺だって分からない。



いや、分かるんだ。感覚としては……だけど。


でも、言葉にはしにくいし、実際に全力で薬の力を発現させた訳でもないから……。

「前に呂布と戦ったって時……あの状態が隊長の本気なんやろ?」

「そうなる」

否定したってどうなるものでもない。本当は違うんだが、限りなく正解に近い不正解だし。

「……なぁ、隊長」

だから、真桜がこれから聞こうとしていることもよく分かる。

「無理だ」

「んなっ!? き、聞いてくれるぐらいえぇやん!」

「見せろって言うんだろ? 無理だ」

「うぐっ……な、なんでなん? この武器をもっと強くするには、隊長の能力を正確に測らないとあかんやん」

言っていることは尤もなんだが。

「俺の本気は制限付きでな。やるとすごい疲れるし、反動もでかい。おいそれを見せられるものじゃないんだよ。俺が前の戦いの時、最後にどうなったのか。見てなかったのか?」

「ウチ、負傷したみんなを見てて、城内に居たから……」

「運がなかったな。とはいっても……」

見ていた誰かに教えてもらわなかったのか? という言葉は飲み込んだ。見聞だけで判断出来ることじゃないから、こうして直接見せろと言ってきているんだろう。

「いや、まぁ、結局使ったら、俺自身が例外なく相当な深手を負う。華佗が居るとはいえ、敵もいないのにそういうことをするのはちょっとな」

「……武器作って欲しいとか言う割には、協力的やないよね、隊長って」

ぷいっとそっぽを向かれる。半信半疑ってところなんだろう。

やめていいって言ったはずだけど……それを言うとややこしくなるか。

「真桜がまだ協力してくれているのは助かっているよ。ただ……言えないことはやっぱり多い。毎度壊していてすまないと思うけど、出来る範囲でなんとかしてみてくれ」

「…………むぅ」

そっぽを向かれたと思ったら、今度は口を尖らせてくる。表情が本当に多彩だな。

「まぁえぇわ。隊長が手伝ってくれへんのなら、もう少し時間が欲しいな」

「それは構わないよ。出来れば、二、三日で作り上げて欲しいけれど」

「完成と言えば、もうこれで完成なんよ。だけど……」

真桜が少し、目を伏せて。

「……持ち主の力量も測れないまま、壊れる可能性のある武器しか持たせられないって……辛いやん」

「また、俺はきっと壊すだろうしな」



紅桜……大きな戦いに赴いたこいつは、今のところ例外なく壊れている。俺に壊されたり、薬に壊されたり、相手に壊されたり。



でも、真桜が言いたいことはそういったことではなかったようだ。

一瞬、こっちを見上げて、睨みつけてきて。

「そういうこと言ってるんじゃ……っ、もうえぇわ」

……また少し、的外れな意見を口にしたみたいだな。

「言いたいことがあるなら、言うべきじゃないか? 武器に関してなら聞ける範囲で聞くけど」

「だから、別に隊長がどうのこうのなんて言ってないやん」

真桜は紅桜を揃えた膝の上に置いて、その刀身に赤い溶鉱炉の炎を映し出させている。

「ただ壊すのは、別にえぇんよ。どんなに強い将軍さまだって、全部の戦いで武器を一度も壊さずに戦える奴なんておらんもん」

「そうだろうな」

慈しむように、刀身を油に汚れた手で撫でる。刃にとって悪い行為だと思うんだが……完成と言いつつ、まだ何か手を加えるつもりなんだろうか。

「けど、それでも壊れるのは……壊れないように努力して作っていても、壊れるのは、作り手側にも問題があるんよ。そりゃ、乱暴に扱ったり、そもそも戦いで武器一つにかまけて集中が途切れたりし

たら本末転倒とか……色々あるけどさ」

「さっきの質問がそうだろ? 使用者の力量を測りきれないから」

「せやね。相手が強くて壊れる、とか、戦場で思わぬ事故があって破壊された、とか。そういうのなら納得はいくよ、ウチだって。でも……この剣は、紅桜は……さ」

ぎゅっ――と、柄を強く握って。

「いつもいつも、隊長の能力についていけてないね。春蘭ねーさんと戦った時からずっとそうで……官渡でも、呂布と戦った時も。ギリギリのところで壊れたり、手放すことになったり……それは、戦場とか相手が強いとかじゃなくて……作り手の、ウチの能力の足りなさが、ずっとずっと、隊長に枷を作ってる」

「…………」

その点については、何も言えなかった。

劣化加速についていける武器は、恐らくこの世界には存在しないだろう。仮にあったとしても……それを満足に振るえる奴は、恐らく人間じゃない。

「ま、だから隊長の全力を見せて欲しいっていうんは、ウチの弱音なんやろうけどね」

「悪いことじゃないさ……最善を求めるのは正しいことだよ」

俺の言葉に、真桜が「ははは」と声を出して軽く笑うと、

「もうちょい、考えてみるわ。前よりも確実に良い品になってるんは、保証するで」

「期待してるよ」

真桜が笑みを消して炉に向き直ったので、会話はここで終わりだと思って俺も背中を向けたが。

「あ」

そういえば、一つ言っておきたいことがあった。

「真桜」

「んー?」

面倒だから、さっさと行けって態度がありありと出ているが。

「俺が官渡から流れに流れている時、別の武器を持って戦うことがあったんだ」

「……うん」

少し興味が沸いたのか、視線をこちらに向けてくる。

「いや、大したことじゃないんだけど。普通に一般の兵が持っているような剣を奪って戦ったんだが……その時に、真桜がどれだけ俺に合った武器を作ってくれていたのか身に染みたよ」

そう言うと、真桜は少し驚いた様子で視線だけじゃなく、顔もこちらに向けてきた。

「な、なんなん、急に?」

「重いし、持ちにくいし……よくよく考えたら、こんな武器でみんな戦ってるんだなってさ。俺の我侭をそのまま武器に反映してくれているのもそうだけど、それ以上に……戦いやすさが段違いだった。そういう意味では、今もこうして真桜が俺のために武器を作ってくれていることに感謝してる」

「…………ふん」

特別なコメントもなく、でもバツが悪そうに炉に向き直ってしまった。



…………うむ?



「…………いや、いいか。それだけ。じゃあな」

「はいはい、さっさと出てってーな」

追い払われるように、俺は工房の外に出る。

外に出て、新鮮で冷たい空気を浴びるように吸って、火照った身体が収まってくる。



にしても、最後の真桜の顔…………いや、炉が近いから、赤く見えたんだろう。



後編へ

スポンサーサイト

category: あの想(分割版)

cm 0   tb 0   page top

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://lisereaend1234560.blog.fc2.com/tb.php/291-dc7b7c44
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

page top

プロフィール

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。