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適当広場

のんびり適当にがモットーです。多分

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あの想いと共に 第70話 後編 

あの想いと共に 

第70話 後編

     ◆  ◆  ◆





目の前には、華やかな舞台がある。ライトは煌びやかに明滅し、客席には大量のスモーク。

「久しぶりに見ても、よく出来た仕掛けだなって思うよ」

俺は、思考を止めて、まずは目の前の物事に向き合おうと決める。



しかし、本当に。



本当に久方ぶりの、彼女達を間近で見て。


「仕掛けなんて言わないで。私達は努力してここまで伸し上がってきたの」


「ていうかさー、一刀おっそいよー! やっぱちーちゃんが言ってた通り、寄り道してたんだねっ!」


「適当にどっか行ったら、誰か起きてたりでもした? ていうかあたし達のところに最初に来ない時点であり得ないんだけど!!」


三者三様の言葉。



天和、地和、人和……。



そうだな。これが、彼女達の持ち味で、魅力で……何よりの存在感だ。



「いやぁ、気付かなかったんだ。当てずっぽうで歩いたら、三人が居てびっくりしたよ」

「よく言うわ……この中を歩いてきたんだから、それ相応にあくどいことをして来たんでしょう?」

三人は変わらぬ姿で、舞台の上に居る。

天和が舞台の中央で立っていて。

俺から見て右に、人和が手に持っている本に何かを書き込みながら俺を観察していて。

地和はめんどくさそうに、左側に膝を曲げて座っていた。モデルポーズに見えるな。



それに……地和。



あいつ、何気なく座っているけど……華佗のような気膜を纏っている。色は違って、禍々しい青色だが。



前の世界でもそれなりの彼女の妖術は見ていたはずだが……あれだけ分かりやすく、何かをしているって様子を見るのは初めてだな。

それだけ、この町を包む妖術が強いということにもなるのか。

「あくどいって、随分な言い方だ」

「だってさぁ、この空間って妖術に精通している人しか起きれないんだよ。なのに一刀が起きているってことは、そういうことだよね~」

「ていうか、それだよ。なんでこんなことしてるんだ?」

俺は舞台に近付いて、舞台から足を下ろすようにして組んで座る。

すると、天和が当たり前というように俺に抱き付いてきた。

「ん~? だってさぁ、ちーちゃんが一刀を見たって言うんだもん」

「居るのは知っていたけどさ……本当に一瞬だっただろ。人違いの可能性もあったんじゃないか?」

天和の豊満な胸が当たって気持ちが良いが……天和自身はそのことを全く気にしていないようだ。

俺は気になるんだけど……先に話を済ませてから注意するか。

「無いわよ。あたし達を見てびっくりしたような顔してたもん。それに……今更あたしが一刀の顔を見間違える可能性なんてないでしょ」

「そりゃ光栄だね」

「褒めてないから!」

煽ると、嫌そうに言って顔をぷいっと背けられた。

「一刀、生きていたのね」

人和が俺を見下ろしながら言う。

「ご覧の通りだよ」

「でも、少し見ない間に随分と妖術が染み込んだのね」

「あぁ……やっぱそうなんだ?」

「やっぱり……? 思い当たる節でもあったの?」

馬岱のことを喋るかどうかか……。

…………まぁ、話しておいた方が良いだろう。

「野暮用でね。馬騰の屋敷に行っていたんだが、そこで馬岱に会った」

「あら、お得意様よ。でも、何故起きていたのかしら? さっきも言ったけど、この空間は妖術を扱えるか、妖気に慣れていないと起きてはいられないの」

「みたいだな。だけどあの子、左手で必死に頭を撫でていたよ。握手でもした?」

「あ……それあたしだわ」

地和が明後日の方向を見ながら言う。

「君が?」

「毎度来る度に握手を求められて、手を握りながら話をしたりしていたから。多分それで、一時的に妖気が染み込んだんじゃないかしら」

「なるほど」

予想通りだな。

「術を強めて正解だったわねー。馬岱さん、ちゃんと眠ってくれた?」

「あぁ、ちゃんと見届けてきたよ。夢のようなものだって説明はしたし、多分大丈夫じゃない?」

「だといいんだけど」

言いながら、地和は目を合わせてくれない。

……色々と確執もあるし、しょうがないかね。

「……あ、そうだ。かずと、かずとっ♪」

ぎゅっ、ぎゅっと俺を抱きしめる力を強めながら、名前を呼ばれる。

「なに?」

「また会えて嬉しいよっ♪ ずっと会いたかったんだぁ」

「…………あぁ、うん」

あまりにもストレートな表現に、ちょっと言葉が出てこなかった。

「なぁに、照れてるの?」

人和が穏やかな笑顔で言ってくる。

その表情を見るに……人和も人和で、俺との再会を喜んでくれているようだ。

「照れるっていうか……面食らったって感じかな」

「えー? 照れても良いんだよ、一刀。そういう一刀も見てみたいなぁ」

「機会があったらね」

あんまり無さそうだが。

「それで?」

俺は話を戻す。

「なんでこんなことしたのかって?」

「あぁ」

「そんなの、あなたを誘き出すために決まってるじゃない」

そうだろうさ。いや、そうなんだろうけど。

「ここまで大掛かりにする必要があったのか? 普通に探せば良かったじゃないか」

一歩間違えば、彼女達が妖術使いだってのが露見する。そうなったら今まで気付き上げてきた実績が瞬く間に瓦解してしまうのだが。

「私もそう言ったんだけどね……危険すぎるって。でも、ちぃ姉さんは絶対一刀だったって言うし、ここに居るっていうこと自体で、どういうことなのか一刀も分かっているでしょ? だから、私達だけで探している時間もない。なら……確実な方法を選んだってわけ」

「確実ってな……」

妖術で町を包み込むのが? という言葉は飲み込んでおく。

「いつも通りなら、あたし達に普通に話し掛けて来るんじゃないの? 顔見たのに逃げたってことは、バレたくない理由でもあるか、見つかったら困る事情があるって思ったんだけど?」

……なるほど。地和が機転を利かせてくれた訳か。

でもさ……こうしてこんなことして、俺を探している時点で、その気の利かせ方自体が……。

「誰にも話が聞かれない密室としては、些か大きすぎると思うけどね」

「一番手っ取り早かったのよ。今日で公演も終わりだったし、術を使う余裕もあったもん」

今の地和の言葉。

……やっぱり、華琳は翌日にはここに辿り着くんだろう。朱里の読みは正しかった。

「俺が起きなかったら、どうするつもりだったんだ?」

「私もそこは心配だったけど……ちぃ姉さんが、きっと大丈夫だって言うから」

「地和が?」

俺は天和に抱きしめられたまま振り返って、地和を見る。

特に感情が見受けられない地和の横顔。

「確信でもあったの?」

「劉備さんとの戦いで、使ったんでしょ?」

「それか」

劣化加速の法が乗った、薬の使用。

あれだけ大々的に戦場を荒らしたんだ。地和の耳にその話が入っていてもおかしくはない。

「だけど、あれって仙術じゃないのか?」

俺の素朴な疑問が、少し意外だったらしい。地和がようやくこちら見て、少し不思議そうに聞いてくる。

「その仙術の影響を押さえ込むために、それだけの妖術を仕込んだんじゃないの?」

「いや……そういう訳じゃないけど」

「……はぁ? じゃあなんで見て分かるぐらい妖術漬けなのよ、あんた」

「んー……」

華佗が言うには、俺の消耗を抑えるために朱里が施したらしい……って話だが。朱里本人に妖術の話を聞いてはいないんだよな。関羽の前で妖術の話をするのもどうかと思ったし……それでも朱里が噛んでいるのは間違いないんだろうけど。

「ていうか、分かるの? 俺が妖術漬けって」

聞くと、三人が同時に頷く。

「そりゃあ、それだけ分かりやすく漏れてたら分かるかなぁ~」

「臭いもそうだしね」

「……そうなんだ」

分かる奴には分かるのか。それに、臭いってなんだろうか。

「止める手段ってある?」

「あるけど……」

人和が言葉を濁して、地和を見た。

「止めたら止めたで、もうダメよ。身体……ぼろぼろじゃん」

地和が、少し悲しそうに目を伏せた。

「酷い状態?」

「…………さっきから聞いてて思ったんだけど、あんた、自分で妖術を仕込んだんじゃないの?」

少し、鋭く睨まれる。

……地和だけならまだしも、天和と人和、二人が居る時に詳しく話せる内容じゃない。

「事後操作になる」

「……そう」

人差し指をくわえて、なにやら考え込み始めた。

「知らない人に、それだけのことをされたってことなのね」

「あんまり言えないけどね。でも、おかげ様でなんとか生きてはいるよ」

「事後操作……その割には、乱雑すぎない…………?」

地和がなにやら呟いている。

乱雑か……俺を助けるつもりは……いや、あの時の朱里には俺を助けなければならない理由はあったはずだ。

それでもしっかりとした治療ではなく、乱雑なやり方になった。



…………まだまだ何かありそうだな、あいつ。



「じゃあ、その人に感謝しないとね~」

まるで恋人のように天和が俺に寄り添ってくる。

……こんなに好かれてたっけ?

「なんか、随分とくっついてくるね」

「え~? 一刀、嫌なの?」

「嫌じゃないけどさ……少し不思議に思って」

言うと、人和が少し俺に近付いて。

「正直、私も一刀の帰参を待ち望んでいたわ」

「え?」

なんで? いやほんとに。

「一刀が捕らえられて……天和姉さんは、一刀が取られたって思ったみたいだけど。私はそういう意味ではなくて、単純に一刀の後を継いだ人の力量の低さが嘆かわしいものだったのよ」

「そうだよー! 一刀、劉備さんに浮気したのかなって思ったら夜も眠れなかったもん!」

「あー……」

それはそうだろう、と思う。浮気は置いといて。

俺は前の世界の知識も総動員して、既に知っていることは全て先回りでやり終えて。更に彼女の達の性格も熟知しているから、そのモチベーションやポテンシャルの維持と向上を常に意識していたし。

「一刀がどれだけ優秀な文官なのか、改めて思い知ったわ。その上、武官としても優秀だったみたいだけど」

「それはありがとう」

「褒めて……は、いるけどね。それで、一刀の方こそどうしてここに居るの?」

「俺はね」

天和の抱擁から逃れるように、舞台の下に降りる。

「むぅ……どうして逃げるの、一刀」

「逃げてないよ。心地良すぎると甘えたくなるから、その前に自制しているだけさ。後、俺がここに居る理由だが……」

一つ、深呼吸をしてから、

「諸々の事情があって、馬騰に会いに来たんだ」

「えっ?」

「ん?」

「……ふーん」

また、三人で返事が違う。それはそれとして。

「思うところがあってね。俺が仕入れた情報によると、華琳は明日の夜にはここに来るんだろ? じゃあ、それまでには間に合わせないといけないな」

「でも、馬騰は病に臥せっているって聞いているわよ?」

「らしいけどね。でも、そこは俺にとってそんなに重要じゃないんだ」

首だけ後ろを見て。

天和はきょとんとしていて。

人和は俺の言動を訝しんでいて。

一番後ろに居る地和は……あぁ、俺を睨んでるな。何をするのか分かってるって顔だ。

「最初はこんなことをされて、そりゃあびっくりしたけど……久しぶりに三人に会えてよかった。ただ、俺には俺の目的がある。こうして俺達だけの時間を作ってくれたのは嬉しいが、もう少しだけ待ってくれないかな? 馬騰と話をしたら、魏に戻るからさ」

「ほんと? 本当に魏に戻ってくるの、一刀」

「あぁ。今回のはさすがに想定外だったんだ。魏から離れるつもりはなかったし……時間が無いから先回りした、ぐらいに考えてくれればいいよ」

「馬騰さんと話すんなら、曹操さんと合流して一緒に行ったほうが良いんじゃない?」

地和が遠回しに俺の真意を引き出そうとしてくる。

「それじゃ、少し遅い。華琳に聞かれて困る話じゃないが……ま、全部終わって話せそうなら話すよ。だから、俺のことは内密にして欲しいな」

「それは構わないけど……」

人和が言う。天和も特に口外はしないだろう。

「俺と会ったって話をするには、少々説明が面倒だろうからな」

「曹操さんが嫌いそうなことだものね、こういうの。私達だって分かっているわ」

もし口を滑らしたら、どうやって俺に会ったのかって話になって、更にこの空間の説明までしなきゃならなくなる。

さすがにこの力と、使い方は異質すぎだ。それに、人の意思を強制的に操作するのは華琳の最も嫌いなことの一つ……そんな危ない橋を渡る必要はない。

「一刀、行っちゃうんだ? せっかく一緒にいられると思ったのに……」

天和は俺に駆け寄ってきて、悲しそうに見上げてくる。

俺は彼女の肩に手を置いて、

「ごめんな、天和。でも少しの辛抱だよ。俺には優秀な味方が何人かいるから、有事になっても何とかなる。君らは……」

「魏軍とは別に移動しているわ。当然でしょ」

「だろうな。じゃあ……次に会う時は魏の領内か」

「そうね……今回の仕事は急な話で、尚且つ準備不足も多かった。これを口実に、少し休ませて貰うつもりよ」

「じゃあ、その休暇中に会いに行くさ」

俺は天和から、延いては三人の居る舞台から離れていく。

「もう話すことはないな。お互いに、聞きたいことはそれなりに聞けたし……後は、もっとじっくり時間を取れる時にしよう」

「む~……」

「むくれないでくれよ。撤収、しっかりな。また今度会おう」

一度振り返って、天和に言う。

「一刀、絶対帰ってきてね。絶対だからねっ」

「あぁ、勿論」

笑顔で応対する。天和は素直で……良い子だな。扱いやすいうとも言うが。

「身体のこと、こちらで少し緩和出来るかどうか、調べておくわ」

「え、ほんと?」

人和からの意外な提案に、思わず足が止まる。

「それ、神経にまで作用しているでしょ。目はしっかり見えてる? 指を動かしている感覚はある? 疲れを感じないとか、眠気が来ないとかない? 頭痛がするとか、突発的に眩暈が来るとか、お腹が空かないとか、逆に常に満腹状態で苦しいとか」

「…………んー」

さすが、精通していると自分達で言うだけはある。今言われた中で、見事に引っかかっているじゃないか。

「あるのね……馬鹿一刀」

俺の反応を見て、即座に地和に突っ込まれる。

「地和に言われると切ないな」

「何がよ! ったく……人和もこんな奴の面倒なんて見なくていいわよ」

「そうはいうけど、ちぃ姉さん。ちぃ姉さんだって、一刀がいなくて贅沢が出来ない、舞台予定の詰め方が下手で時間の余裕がないって散々ぼやいていたじゃない」

「そうなんだ?」

「そんだけ今のあいつが無能なのよ!! 人和も余計なこと言わないで!」

怒らせてしまった。こちらに少し近付いてきた人和が、小声で「あれでも結構心配してたのよ」と付け加えてくれる。そりゃ嬉しいが……ね。

「色々元気を貰えたよ。俺はそろそろ行く。三人とも、気は抜かないようにな」

ここはあくまで、敵地なんだから。

「一刀もね。ちゃんと帰ってきてね!」

「あぁ」

「気をつけて」

「ありがとう」

二人はそう見送ってくれるが、地和は舞台から動く様子がない。術の影響かもしれないが……。

俺が再び背中を向けて歩き出すと、

「泊まっている宿までどれくらい?」

そう、地和の声が俺の背中に掛かる。

「十分ぐらいだけど」

「じゃあ、それぐらいに調整して少しずつ術を解いていくわね」

なんて、お言葉が。

ちゃんと考えてくれてはいるんだよな。人に見つかると困るし。お互い様だけど。

「ありがとな」

「…………もう、無茶はしないで」



小さく。



でも、懇願のように聞こえた言葉に。



「善処するよ」


俺は結局、そう返すことしか出来なかった。





     ◆  ◆  ◆





宿に着く、少し前。

その頃に、丁度よくスモークがきっかりと晴れた。スポットライトのようなぼんやりとした光もなくなり、今は深夜。まだ日の出には遠い。

「…………」

のんびり歩いていたので、まだ宿屋には数分という距離がある……が。

そこで俺は足を止めて、舞台の方を見やった。

随分な力だった。少なくとも、前の世界であんなのは見たこともないし聞いたこともない。

でも、例の本の力の効果もあったかもしれないが……元々それぐらいの力はあの子達にはあったんだろう。それが、変な方向に爆発してしまった、というだけで。

……つまり、俺が知らないだけ、体験していないだけで、この世界にはまだまだ未知なる力や物は存在する。

それこそ、華琳にだって俺の知らない部分はきっとあるだろう。全てを知っている、なんて豪語するつもりはないが。

「…………その、一つに」



俺をこの世界に連れてきた力が……ある。



…………はぁ。

疲れることばかりだ。

だが、まだようやく道は半分といったところ。

馬騰との邂逅を済ませて……定軍山。いや、その前に魏で溜まりに溜まった政務があるだろう。今から風の笑顔が怖いな。



でも……それも全て、明日次第だ。



手違いが一つでもあったら、俺は世界から消し飛ぶだろう。今俺の支えてくれている華佗、関羽、朱里。この内一人でも失えば、俺に未来はない。

三人とも、とんでもなく性能が高いが……だからこそ、慢心しないようにしなければ。三人は大丈夫だったが、俺が死にました、なんてことになる可能性の方がよっぽど高いんだし。

「…………?」

思考をまとめて、前に向き直った時だった。

宿の二階から、武器を持って大通りに降り立つ何者かの姿が。あの長い黒髪は……関羽だな。

「やれやれ……」

俺が居ないのを見て、焦って外に出た……ってところだろう。

関羽はすぐに俺を見つけると、瞬く間に俺の傍まで駆け寄ってくる。

「北郷殿っ」

目の前で急ブレーキを掛けると、風がふわっと舞って、関羽の香りを乗せて俺を通り抜けた。

「も、申し訳ありません。寝入ってしまっていて……そんなつもりは、無かったのですが」

ぎゅっと俺の腕を掴んでくる。そうしながらも、不安という感情がある表情で俺を見上げてくる……こういう関羽は新鮮だ。少し、頬が緩むな。

「いや……疲れていたんだろう。仕方ないさ」

その緩みを隠すように、俺は笑顔を浮かべる。ある意味で俺が悪いんだ。関羽が悪い訳じゃない。

「それは……そう、ですね。何を言っても、詮無きことですが……」

すごく悔しそうだ。妖術の影響下にあったのだから、仕方が無いが……。

それを言う訳にはいかないよな。

「それに、謝る必要はないよ。俺が勝手に外に出ていたんだしね」

「……えぇっと。私が言っていいのかどうか迷いますが、どうしてこんな夜更けに外に?」

俺が歩き出すと、関羽は俺の腕から手を離して、真横に立ってくれる。

「ちょっとした情報収集だよ。おかげで、明日朱里は楽が出来るんじゃないかな」

「は、はぁ……そうなのですか?」

「あぁ。まぁ、今日はもう寝よう。さすがに疲れたからね」

馬岱からの、三姉妹の一件。

それに、空に浮かぶ月の場所を見る限りだと、俺が寝たのは三時間ぐらいのようだ。さすがにこれでは寝足りない。

「……寝ずの番をしたいところです」

「ダメだよ。明日が本番だって言っただろ? こういう想定外はもうないから、ゆっくり休め」

「…………」

不満そうだ。反応を見る限り、今までこういうことは一度も無かったんだろうな。

加えて、これじゃ気を抜いていたとも取られる……そういう風に自分でも思えるのが嫌なんだろう。

「それとも、俺と手を繋いで寝るかい?」

「よろしいのですか?」

……冗談で言ったんだがな。

ほんとにいいの? って感じで真に受けられた。それだけ衝撃的だったってことか。

「まぁ、君がそれで落ち着いて寝れるって言うならね」

俺のせいで寝つきが悪くて、性能が下がった……なんてことになるのは困る。

「では、是非お願いします」

なんてことないように言われた。さすがに純真というか、過ぎるというか……そういう風に考えてないだけか。

「分かったよ。じゃあ、さっさと戻って寝るぞ」

「はい」

本当に素直な子だ。

関羽が最初から魏に居たら……なんて、そういう妄想は控えるべきか。

しかし、なるようになっているんだな……国の在り方ってやつは。



なんてことを思いながら、俺達は静かに部屋へと戻った。




続く


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