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のんびり適当にがモットーです。多分

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あの想いと共に 第67話 前編 

あの想いと共に 


第67話 前編


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

とにかくだ。

まずは……呼吸が既に苦しそうな、この関羽を……そうだな、ぼろぼろで汚れているが、布団を裂こう。

そして、裂いた布団を関羽の身体に巻く。

「少し痛いが、我慢してくれ」

「うっ……つっ……」

力を入れて、解けないように、首元から下を隠して。

また余分に切って、今度は顔全体を隠すように結ぶ。

「苦しいか?」

「ふー……ふー……いえ……ふー……」

「全然そうは見えないが……」

とりあえず、見た目だけは隠せているだろう。俺の格好と、血に汚れた布で隠された人物を背負っていたら、怪しいどころじゃ済まないが、関羽の顔が見られるよりはマシだ。

「だが、どこに行けば……」

関羽の武器にも布を巻きながら、そう愚痴が飛び出る。

華佗の居場所は分からず、朱里も何を考えているのか不明だ。早速裏切ったりはしてないだろうけど……。

「ふぅ……ふぅ……北郷、どの……」

「……ん? 関羽?」

小声で、何かを呟いている。

「武装蜂起が、あった場所へ…………」

「武装蜂起?」

さっきの、あれか?

「はぁ……はぁ……」

本当にやばそうだ。余計なことは聞かないほうが良いだろう。

俺は武器を持ち、関羽をおぶって、すぐに部屋を出て…………一度、振り返る。

「…………」



まるで、この部屋だけ大量殺人があったような、夥しい血と傷の痕。



これが、俺に関係しているっていうなら…………。



「…………北郷、どの……?」

「あまり喋るな」

長居は無用ってやつだな。

俺は下に降りて、そっ……と引き戸を開けて、外を確認。



人は……いない。よし、今のうちだ。



外に出て、人目の付きにくい路地という路地をこそこそしながら歩く。建物に挟まれた、狭い通路をぐねぐねと。

「……っと」

十字路になっている場所を曲がろうとした時、兵士が走っていったのが見えて、足を止めて隠れる。

みんな、ひたすら南東方向に走っているな。つまり、目的地はあちらってことになる。

「…………」

少し止まって、耳を傾けると――――戦いの音はちゃんと聞こえてくる。

だが、少量だ。ということは、もうすぐ決着が付くんだろうが……かなり早いな。それだけ優秀ってことか?

……どちらにしても、それまでは焦って動く必要もないのかもしれないな。

「……ふぅ」

一度息を吐く。だからといって、動けるようにはしておいた方がいい。

関羽を抱えなおして――――ピチャッと、耳元で水温が。

「ん?」

「こほっ、こほっ……」

「関羽……!」

すぐに地面に降ろして、建物に寄りかからせて。

「血が……」

「こほっ……こぷっ」

口元の布が、じんわりと赤く染まっている。

「吐血している……まずいな」

怪我は深くないと思っていたが、動かしすぎたか。

「ごほっ、ごほっ……だ、だいじょうぶ、です……だから……」

「大丈夫な訳があるか」

まともに身体を動かせないぐらい、全身に怪我をしているんだ。それに、吐血していて大丈夫な人間が居たら、そいつはもう人間じゃない。

これじゃ下手に動かせない。だが、置いていく訳にも……。



「一刀」



「っ?」

後ろを振り返る。

「上だ」

スタッ、と降りてきたのは。

「華佗……! ほんと、お前はいつも最高のタイミングで……!」

数日振りに顔を見た、華佗だった。

思わず顔が綻ぶ俺だったが、華佗は関羽を見て逆に表情を引き締めた。

「これは……どうしたんだ?」

すぐにしゃがみ込み、鍼を取り出す。

それを確認した俺も二人に顔を近付けて、

「説明は後だ。華佗は、どうしてここに?」

「諸葛亮から連絡があってな」

一枚の紙を取り出して、俺に渡してくる。

華佗はそれと同時に関羽に鍼を刺した。

僅かな光の後、一瞬で傷が消えて。

「……助かった。感謝する」

動かせる身体になったようで、億劫そうに顔部分だけ布を剥ぎ取り、口元を乱暴に拭う。身体部分を包む布には血が大量に付着しているが……。

「大丈夫なのか?」

「おかげさまで……ですが」

「疲労は濃いようだな」

疲れたように息を吐く関羽を見て、すぐに華佗が看破して。

「ですが、時間がないのでは?」

関羽は一度切った言葉を言い切って、俺が華佗から受け取った手紙を見る。

「あぁ……」

すぐに開いて見てみると。



『こちらは華佗さんへ。明日のお昼頃でしょうか。この町で、一悶着あります。その際、問題が起こった箇所の周りを調べてみてください。一刀さまがいらっしゃると思います』



なんて書き出しが。

俺の行動は完全に読まれていたのか……もしくは最初から関羽に誘導するように仕向けていたのか。



『一刀さまに出会ったら、この手紙はそのまま渡してください。こちらは一刀さまへ。多分一刀さまは、関係性がある場所と思って先に例の場所へ行くはずです。そこに関羽さんを誘導しておきました。関羽さんとのお話の結論はこれで出たと思うので、何事も無ければわたしの手紙が見れているはずですね。今は恐らく、南東近くの場所でこれを読んでいらっしゃると思いますが……』



「朱里に?」

「……待っているようには、言われました」

目を逸らされて、だるそうに言われる。関羽に何があったのか、それも気になるんだが……俺は先に、手紙に目を通す。



『逆側で、また暴動が起こります。わたしが起こしたって勘違いはしないでください。元々残っていた反乱分子を焚きつけて、一辺に終わらせようという策を利用しているだけです。だから――』




「おい! また奴らが動いたぞ!」

「次は北西か? こちらは誘導だったのか!」

兵の声が聞こえ、すぐに遠ざかっていく。

「……諸葛亮か?」

華佗に言われる。

「うん。読んでないの?」

「俺は俺の部分しか読んでないよ。興味もない」

「そっか」

それが有利になるか不利になるか。どっちにしても分からない以上は、いつもスルーだ。俺に関することは相変わらずの徹底ぶり。



『二度目の暴動が起きたら、しばらくその場に待機していてください。どの程度の時間が経った段階で一刀さまがこれを見ているかまでは分かりませんが、少なくとも南東方面が完全に鎮圧された段階でこれを見ている……とは思えません。そこまでは遅くないはずです』



びっくりするぐらい合ってる。北東に走っていく兵士は見たが、それでも南東での戦いが終わったという訳ではないようだし……。



「……あ」

関羽が俺を見て、声をあげた。

「どうした?」

「……いえ」

正確には、関羽は俺を見ていなかった。

見ていたのは――――俺の後方。

「誰か――」



いるのか? と言おうとながら振り返ったところで、ぷにっと、人差し指が俺の口に当てられた。



「お待たせしました」

いつも通りだが、少し大きめの鞄を背負った朱里がそこに居た。

「さすが一刀さまです。わたしの想定した通りに動いてくれましたね」

なんて、とても嬉しそうに。

俺は朱里の手を掴んで、口元から下ろす。

「……喜んでいいのか? いや、朱里と合流できたのは嬉しいけどさ」

「わたしもですけど……愛紗さん?」

不思議そうな顔で、関羽を見る。

……俺が代わりに言うか。

「事情は俺も聞いていないが、俺と共に来るそうだ」

「えっ」

思った以上に、素の驚いた声が朱里の口から飛び出た。

そして途端に慌てふためく。

「ど、どういうことですか?」

「事情が変わったのだ。朱里の方こそ、何故だ?」

関羽だって同じように、驚いた顔をしている。二人の意思疎通は行なわれてはいなかったんだし、当然だ。

「わたしは……桃香さまの意思を成就させるためには、一刀さまの環境を根本から変えなければならないってことが分かって……」

「桃香さまの……意思か……」

……? 引っかかる言い方をする。

「何が気になるんだ? というか、あの部屋何があったんだよ」

「…………襲われました」

「襲われた? 誰に?」



「北郷殿に」



「は?」

「え?」

「む?」

三者三様の声。

「俺に? なんで?」

「言葉としては……少し違うかもしれませんが。それでも、私にこれだけの怪我を負わせたのは北郷殿です」

「……いや、待て待て。俺がどこにいたのか、知っているだろ」

「そうですね……牢屋の中に入れられていたはずですが」

震える足で、関羽は建物の壁を利用しながら立ち上がって。

「北郷殿は本来、どこに居るべきだったのですか?」

「…………はぁ?」

「身体の調子は、どうなのですか?」

こいつ、何を言っているんだ? 桃香の病気でも移ったんだろうか。

「だから、さっきから何を言っているんだ?」

「私の方も、よく分からないのです……それに、こういったことは一度だけではなくて」

「前にもあったってことですか?」

「……朱里には話していないがな。話せる状況ではなかったし」

話せる状況じゃなかった……?

「一刀が寝ていた頃の話じゃないのか? それは」

「それは…………そうなのだが」

「…………待てよ」



何かおかしい。いや、おかしいというか、関羽が何を言っているのか全然分からないのが正しい捉え方なんだが。



それでも……この“おかしさ”を俺は知っているはずだ。



あってはおかしい内容が、関羽の口から漏れているというべき……なのだろうか。



「俺はずっと、寝ていたんだろ?」

「わたしは、そう聞いていますけど……」

朱里も関羽の言っている内容が分からないようだ。しきりに首を傾げている。

「……今はしっかり、起きていらっしゃいますね」

「見て分かるだろ」

「あなたが寝ている時は、朱里も寝ていた。だから、朱里は具体的なことは深く知らないのです」

寝ている時?

朱里は体調不良で寝込んでいた。だから、知らない。

でも、関羽は知っていること……?



もしかして…………いや、待て待て。それじゃおかしいことがある。



だって、あの時、星は……。

「……星だって、俺が起きた姿を見て驚いていた」

「そうですね」

断言する。

「でも、私は知ってるって……そう言いたいのか?」

「いえ……残念ながら、私は桃香さまの言葉をそのまま受け入れているだけですので」

「……桃香?」

桃香…………また、桃香か。

「ですが、それとはまた少し違うのです」

「違うって、何が?」

「…………」

何でそこで黙るんだよ。

にしても…………だ。

「似たようなことはあったな」

俺が口にする前に、華佗が言う。

「……三姉妹の時か?」

「まさに、勘付かれていただろう。それに、一刀は確かに寝ていたんだろ?」

「…………」


そうだ。


俺は例の体調不良で寝込んでいた。


寝込んでいたが…………あの三姉妹は、まるで俺と頻繁に出会っていたかのような振る舞いをしていた。



それは、つまりだ……。



「俺はもう、起きていたんだぞ?」

「だが、前例とも言えないが……あの部屋は俺達にとって、少々面倒なこともあった」

「…………」

だから、と華佗は言いたいんだろう。

関羽は黙ったままで、朱里は完全に蚊帳の外だから説明して欲しいって顔をしている。

「…………いや、いい。とりあえず、まずはここを出て涼州に向かう」

長話している場合じゃなかった。まずは最低限、話をするにしても安全だと言える場所まで移動するべきだ。

「涼州ですか? 魏の国内ではなく?」

「そうだ。今、華琳は涼州に向かっているんだろ? 漢中なら、魏に向かうよりも早く合流出来るだろうし……少し、打算もある」

「……そですか。じゃあ、後でそれはお聞かせください。それに……そろそろ頃合ですから」

「頃合?」

何がだろうか?

「……確かに、兵の気配が無くなったな」

そう、関羽が。

朱里が頷いて、

「我が軍の兵は優秀ですから。そして、南東の端っこ。そこに井戸があります。枯れ井戸ですが、元々は近くの川の水をこちらに流していたそうです」

「抜け道か」

「人が通れるだけの広さがあるのは、確認済みです。今ならみんな北西に気を取られているので、見つかる可能性は皆無に近いです。すぐに向かいましょう」

「……分かった。けど……」

俺は関羽を見る。

「……一緒に行きますよ?」

「信用していいのか?」

「朱里が引き込まれていたのは完全に想定外ですが……私と朱里。二人が居れば、より早く北郷殿の目的が達成出来る筈です」

「蜀の人間と殺し合いもすることになる」

「聞きました。そして、それはやれます。それをやるぐらいの覚悟が無ければ……ついていけないのでしょう?」

「……なんのために、そこまでする? 朱里には俺の事情は全て話した。話した上で、朱里は俺の隣に並ぶ決意をした。だが、お前は……」

関羽は首を横に振る。

「北郷殿の事情……気になりますが、それ以上に私は自分のことで精一杯です」

「なのに、俺に気を配る余裕があるって言うのか?」



「私は……他の北郷殿はいらない」



「……なに?」



関羽はじっ……と俺を見て。



「私にとって必要なのは、今こうして私に憎まれ口を叩く北郷殿です。他の北郷殿は、必要ないんです。この北郷殿を、私は救いたいと思っていますから」



…………。



華佗と、視線が合う。

「面倒になったな」

苦笑しながら言われた。本当にだ。

「……後でまた、詳しく聞かせてもらうぞ」

「ご随意に」

「ちっ……朱里、案内しろ」

「はい」

先導して、朱里が歩く。朱里、俺、関羽、華佗の順番で。

短いが、長くもあった漢中はこれでお別れだ。



もう少し……もう少しで、ようやく華琳に会える……!





     ◆  ◆  ◆





井戸から無事に漢中を抜け出し、丸一日歩いて。

国境を越えたところまで行くと、そこそこ大きい町があったので、俺らはそこで宿を取ることにした。まだまだ話し合わなければならないこともたくさんあるから。

「以前のことを思い出すな」

「以前?」

「俺と関羽の逃避行の話だよ」

「誤解を招くような言い方はなさらないでください」

「呉から逃げて来た時でしたっけ? 一刀さまと愛紗さん、相変わらず無茶と無謀を同時にやり遂げてるって言うか……」

四人で一部屋を取る。朱里が結構な路銀を持ってきてはいるが、無駄遣いをしている余裕はないだろうし、何より俺達には話さなければならないことがたくさんある。

部屋の内装は簡易なものだが、四人一部屋ということでそこそこな広さの場所を取った。入り口から入って右に寝台と窓が一つ、青い絨毯は全体に引かれていて、左には丸テーブルに三つの椅子や小物を入れる棚、水が入った壷が備え付けられている。

「……というか、朱里。何故私と北郷殿が、呉から来たということを知っている?」

関羽が驚きながら、すぐに椅子に座る。ここまで殆ど会話もなく、丸一日近く歩いた。華佗に何度か回復させてもらいながら歩いてはいたが、体力的には限界を迎えていたんだろう。椅子への座り方が、珍しく乱暴で体重が乗っていた。

「え? いえ……なんとなくですけど」

朱里が鞄を置きながら寝台のチェックをし始める。

「状況判断? だとしたって、俺と同じぐらいまともじゃなかったんだろ?」

「あー……まぁ、予想よりはお二人の帰還は遅かったんですが……愛紗さんが戻ってきた時期と、一刀さまが魏に合流したのと……いっぱいありますけど、やっぱり一刀さまが無理な攻めを転じて見せたからですかね」

劣化加速を使った時か。

「無理に見えたか」

「常識の範囲内で考えれば。一騎当千なんてまず出来ないことですけれど、それを成し遂げそうなぐらい強くて……歪なこともしていましたし」

空間を切り裂いたのは、あの戦場に居た奴なら誰もが目にしたはずだ。

「一刀の特異性がよりまわりに知れ渡ったってことだな」

華佗は小物入れから杯を取り出して、壷に突っ込んで水を一気に煽ると、

「ごくっ……ごくっ……っはぁ! なんとなくで分かるものなんだな」

「美味そうに飲むね」

そんなことを言う俺を見ながら、朱里がぽんぽん、と寝台を叩いた。座れってことらしい。

「飲むか?」

「頼むよ」

俺は寝台に座って、華佗は同じ杯を出して水を入れ、俺達全員に配ってくれた。冷たくは無いが、水分は取っていなかったに等しいので、久しぶりの潤いに喉が…………。

「っ……はぁ、ありがとう華佗。生き返るな」

「すみません。水分や食料は何も持ってこなかったので……魏にせよ涼州にせよ、一日もあれば近隣の町に着くのが分かっていましたから」

「誰も諸葛亮を責めてはいないさ。おかげで、俺達は美味い水を飲めている。だろ? 一刀」

「…………」

「一刀?」

華佗に呼びかけられて、我に返る。

「えっ? あ、あぁ……そうだな」

水を飲んだ。

あれだけ歩いたんだ。汗だってかいた。



なのに…………全く、喉が渇いていない。



渇いているって思い込んでいた。だが、一口飲んだら分かった。俺の身体は多少の疲労はあるものの、喉は渇いていないし……腹も減っていない。

食事なんて、いつから取ってないんだろうか? 例の部屋で目を覚まして、牢屋に入れられて……食事が運ばれてきたが、腹が減っていなかったから手はつけていなかった。

じゃあ……少なくとも俺は、四日以上は何も食べてないってことになるのか。

「…………」

劣化加速の影響として、そうした不具合が身体に残っているとしたら、結構まずいな。空腹を感じない、喉も渇かない。

そう感じているだけで、身体は間違いなく腹を空かせているし、喉だって渇いているはずだ。そう思わない、感じてないからって、飲まず食わずはかなりやばい。どっかで能動的に食べるようにしないと。



それに……もう一つ、問題がある。



これは…………なるべくしてなっているから、仕方がないんだが……。



「さて、申し訳ありませんが。まだ日がある内に少し外に出てきますね」

そう言って、朱里は杯をテーブルの上において部屋を出て行こうとする。

「どこに行くんだ?」

「ちょっと目立っていたので、愛紗さんの服の替えを。自分の分は少し用意してきましたけど、さすがに血塗れの服で歩くのはまずいですし」

「あぁ……」

そういえばそうだ。布にだって血が多少付いているし、町の人の目が関羽に向けられているのは分かっていた。

が、多少だと思っていて気にしていなかったな。それ以前に、血塗れの服を女性に着せたままってのはやばいね。

「それもそうだな。じゃあ、華佗は朱里についていってくれ」

「俺が……? だが、良いのか?」

珍しく、すぐに了承が来ない。



これは……華佗にはやっぱり、気付かれているか。



「大丈夫だよ。それより、朱里を一人にする方が不安だから」

「……そうか、了解」

大丈夫だと判断したのか、すぐに歩き出す華佗。

「え? わ、わたし一人でも大丈夫ですよ? まだ日も高いし、ここは治安が悪いって訳ではないので」

「だとしたって、何も起こらないって言い切れないだろ? 朱里の頭脳はともかく、戦闘能力に期待も何もないって思ってるし。いいから、さっさと行って帰ってきてくれ」

「だとさ」

「むぅ……分かりました。それじゃ、華佗さん。よろしくお願いします」

「そんなことを言う必要はない」

二人は連れ立って部屋を出て行く。

「ちなみに、どんな服を買うんだ?」

「愛紗さんは実用性を兼ねているので、出来るなら似たような服を――――」

そういった会話が遠ざかっていき、少し騒がしかった部屋の中が、すぐに静まり返る。

さて……次に、俺がすべきことは。

「関羽、こっちに来い」

「はい?」

椅子に座ってぼんやりしていた関羽に、さっきの朱里の真似をするようにぽんぽんと寝台を叩いた。

「どんな服を買ってくるのかは知らないが、多分情報収集も兼ねて動いてくるだろう。十分やそこらで戻ってくるとは思わないから、今のうちに少し寝ておけ。二人が戻ってきたら起こす」

「いえ、ですが……」

椅子ごとこちらを振り向いて、渋い表情を作るけれども。

「俺の言うことを聞け。分かったな?」

「っ…………はい」

本当に渋々、といった感じで立ち上がり、入れ替わるように俺は椅子に座る。関羽は布を取って、そのままさっさと寝台に横になった。血は渇いているから、ベッドが染まるってことはないはずだ。

「北郷殿」

「ん?」

背中を向けていたわけじゃないが、正面を向いて関羽を見ていたわけでもない。

ただこれからどうするのか、少し具体的に考えなければならない――なんて思っていた時、

「ご無理は、なさらないでください」

「…………何が?」

「純粋な体調の悪さ……という意味であれば、私だってそれなりに分かります。一番分かるのは華佗で、分からないのは朱里でしょうね」

身体は関羽に、頭は朱里に悟られる。

…………やっぱり、俺が求めている結果を言う訳にはいかないのかもな。

「違和感でもあった?」

少し布団を被って、既に下がりつつある瞼をむにむに撫でながら言う。

「さっき飲み物を飲んだ時、少し……」

「……そっか。気をつけるよ」

そっちの違和感か。なら良かった。

「気をつける必要はありません。むしろ、頼ってください。でなければ、我々が共にある意味がない」

「追々慣れていくさ。人に頼るってのは……言うほど簡単なことじゃないからな」

「……深く、考えすぎなのですよ。北郷殿は――」

「さっさと寝ろ」

俺は会話を断ち切る。そんなことを話したくて連れてきた訳じゃない。

関羽は少し目を細めて……どこか悲しそうな顔を作ったが。

すぐに俺に背を向けて――次第に、落ち着いた寝息が聞こえてくる。どんな状況でもすかさず睡眠が取れるのは、戦士として素晴らしいものだって……春蘭が言っていたな。



「……………………ふぅ」



逆に、俺は熱く、淀んだ息を吐いた。

ぶわっと汗が全身から噴き出して、思わず頭を押さえる。

「くっ…………」

ここに来る途中から、既に感じていたが……。

朱里と関羽、二人の穴ってのは想像以上らしい。心臓が嫌にバクバク警笛を鳴らすし、吐き気もあるし、視界が明滅するのは日常茶飯事かってぐらいの自己主張。

関羽に体調がどうのって言われた時は、バレていたのかと内心焦ったが……そこの違和感で無かったのは良かった。何かしら、いつも関羽には勘付かれているが……まだ直接的にこのことは話していないし、必要がないのなら、これ以上の深入りはさせたくないんだが……無駄な重荷になり兼ねないし。

「はぁ……はぁ……」

胸を撫で下ろすように、落ち着いて呼吸を繰り返す。

後で華佗に見てもらわなければ。多分、華佗も気付いてはいると思うし……。

空腹の件も含めて……面倒なことが重なるな。





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