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適当広場

のんびり適当にがモットーです。多分

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あの想いと共に 第63話 

あの想いと共に 


第63話



「俺は…………」



関羽を引き込めれば、俺の活動速度を上げることは可能だ。



可能だが…………しかし、関羽をこちら側に手繰り寄せるということは、蜀を…………――――ん?



「…………」





蜀?





「…………あ」

「……?」

思わず、漏れ出た声に関羽が反応するが。



待て、待つんだ。



もう少し冷静になって、状況を整理しろ。



俺は関羽を引き込めないと思っていた。それは、何故だ?

「…………」



三国志のため――――そうだ――――蜀だ。



蜀という、国興しが確実に行なわれる必要があったからだ。



そのために、関羽の力は絶対に必要なものだったはず。誰がどの程度歴史に関わっているかなんて分からない。



しかし…………今は?



今は…………どういう状況なんだ?



ここが漢中だとは聞いた。桃香の領地とも。

でも俺は、決定的な。それこそ、蜀という単語はまだ彼女達の口から耳にしていない。

「…………少し、確認したいことがある」

「なんでしょう?」

関羽は俺の答えを得るまで帰りはしないだろうが、性急に求めたりもしない。

だから……まだ俺が知らないことを、分かってない各国の状況を確認する必要がある。

「ここは、漢中……だったな?」

「そうですが」

「じゃあ、ここはお前達の国なのか?」

少し、関羽の目が細まる。俺の質問の意図を考えているのだろうけど……。

「…………そうですね。落とした……と言えるかは……曖昧な、ところですが」

数秒要して、やはり嘘や黙秘はよくないと思ったのか、素直に答えてくれた。

だが、どういった経緯でこの場所が桃香達の物になったのか、なんて今の俺には不必要な情報で。

「そうか……ということは、国を興すことに成功した?」

「…………? あぁ、そうか」

納得がいったように、頷くと。

「華佗とまだそこら辺の話はしていなかったのですか?」

「……色々あってね」

「賊の侵入が? あの部屋の扉、確かに壊されていましたが」

「そういうわけじゃないよ……まず、俺の質問に答えてくれ」

そこはまだ、答える訳にはいかないことだ。

それに……もし、蜀という国が。

「そうですね。北郷殿の質問ですが」

もう、この世界に成り立っているとしたら――――。



関羽は一呼吸置いて、なんでもないように。



「無事、桃香さまは領地を得ました。名は蜀と言います」



俺にとって…………そして、関羽にとって。



とても重要なことを、呼吸をするようにさらりと言ってのける。




関羽の言葉に、背筋にぞわりとした、寒気のような快感が走る。




「…………そう、か」

なら。

それなら。

「ですが、おかしいですね。北郷殿は先程、蜀に居続ければ自分の存在が危ぶまれると仰っていたと思いますが」

「えっ」




あれ………………………………?




少し、記憶を思い返してみると。




“死んじゃうなんて、絶対ダメだよ”

“蜀に居たら、俺はかなり高い確率で死ぬんだけどな”

“えっ……な、なんで?”




言った。



確かに、言った。まずい、これはさすがに失言が過ぎるとかいうレベルじゃない。



「既に知っていたのではないのですか?」

「あー…………いや、一応確認をと思ってね」

「…………ふむ」

少しだけ、俺と合わせる視線を強めて。

「私達を助けていた理由の一つが、蜀の建国の手助け…………とか?」

「…………」

鋭い。

「蜀という名前を知っていたのは、偶然かもしれないですが……こうなることが、北郷殿にとっての……朱里が言っていた予定調和というものは、ここに掛かっているのでしょうか?」

実に鋭い。

「普通に考えれば、魏に対しての裏切り、申し訳が立たないからやらない……となりますが。北郷殿ですしね」

「どう思われようと勝手だけどさ……」

「そうですね。北郷殿が私をしっかり認めてくれれば、ちゃんとした話も出来るというもの。焦る必要はない」

問題は無い、というように笑みを作る。これ以上の追及はないようだ。

それなら……さっさと話の続きをしよう。

「後は……あれから、孫策達の動きは?」

「孫策……? あちらも、建国を。というよりも、自分の名を取り戻したという感じでしょうか。呉という国を」

「そうか……そうなんだな」



つまり。



俺が寝ている間に、三国は成り立っていたってこと――か。




ここから……いや、正確には恐らく、華琳を助けた先の戦いからだろうけど。

涼州での一件の後の、秋蘭を助けたこと。

赤壁での介入。



そして――――。



「…………ははっ」



笑いが、こぼれる。




そうだよ。

こっからは、もう好きにやっていいんじゃないか。




だって、三国は成ったんだ。この時点で、もう三国志にはなったんだ。




最低限の目標はこれでクリアしたってことになるはずだ。

涼州を落とす際は不調なんて無かったから、そこは今回も問題には……仮に何かあったとしても、今は華佗がいる。大事にはならないはず。

その後の定軍山からは、前も今も変らないだろう。好きにやらせてもらうしかない。

「それで……華琳は、今は涼州に向けて動いている。そうだよな?」

「……そう聞いています」

その抑止力に、漢中を抑えた。筋書きはこんなところか。



それなら。



俺がこの場で、関羽を手繰り寄せて…………なんの不具合があるだろうか?



蜀が弱くなる? いいじゃないか。それの何がいけない?



歴史の改ざん性が強まる? とっくにやっていることで、ここから先はもうそれすら隠さず、むしろそれしかやらないんだぞ?



「………………ふむ」



あぁ、なんだ。

特別に難しく考える必要なんて、なかったみたいだな。

定軍山は起こり、赤壁も起こり、そのどちらにも勝利して三国を魏が平定する。

こうなればシンプルだ。ここまでの苦労も、僅かばかり報われたというもの。

「北郷殿?」

「……すまない。少し、思考をまとめていた」

俺は改めて、関羽を見る。

関羽は俺の言葉を待っている。そして、自分と目を合わせてきたということは、答えが来ると察したのだろう。少し、姿勢を整えて。

「話してもいい……という、結論になった」

そう、前置きをする。





俺は――――関羽を…………
















連れて、見よう













傍に、置いてみよう








この子を











そんな風に、俺の感情が動く。



正直なところ、この考え方は……あまり、良い予感はしない。

関羽の力はあまりにも実直で、理に適っていて、正義過ぎる。

俺のような邪道とは確実に噛み合わないし、平行して進むこともない。あるとすれば、真っ向から対立するだけだ。

そんな対立する力を、自分の側に、理由もなく相手を信じるだけという形で連れ込むんだ。

まさに、ハイリスクハイリターン……関羽は今までにない無理矢理な我を通す力を俺に与えてくれるが、今まで以上の危地を俺にプレゼントしてくれる可能性があるのも間違いなくて。

関羽の顔は、少しだけ驚いて、しかしすぐに訝しむ。

「それだけではないのですね?」

さすが、よく分かっている。

俺は頷きつつ、

「今まで俺が潰して引き連れた奴らは、俺が主導で無理矢理連れて来て、その力を利用している奴ばかりだ。脅し、騙して、首輪をつけた。そこには覚悟も何も無い。やらなければ、そいつは生きたままの死を与えられる情況を俺が作り上げた」

「……ですが、今回は……」

「そうだ。俺主導じゃない。関羽……お前から言い出したことだ。お前が……他でもない。今の俺に気付いて、その隣に立とうとしているんだ」

越えてはならない線引きを越えて、こちらにやって来ようとしている。

「気付いた……という、言い方」

「ある程度は認めるよ。嘘で誤魔化せない段階まで気付かれたというのなら……認めて、楔を打ち込んだ方が早い」

「私に、そういった物言いは通用しませんよ」

「俺を信じすぎだ……」

一度、息を吐いてから。

「だが、俺が騙したそいつら。そいつらにだって、最低限の確認はした。つまり――」

「私にそれだけの覚悟があるのか――――そう、聞きたいと?」

「そうだ」

関羽は心外だ、とばかりに首を横に振る。

「ならば、問題はないと断言出来ます。どのようなことであろうとも、私はそれをやり遂げるだけの覚悟がある」

「桃香よりも俺を優先することになる」

「北郷殿の問題が解決できなければ……私は魏との盟約にも、桃香さまの信頼にも顔向けが出来ません。全てを成し遂げた上で、胸を張って、あの方の元に戻りたい」

…………そうだよな。



認識の違いは、ここなんだ。



「戻れないよ」

「は?」

俺の言葉に、ただそう聞き返す関羽。

出来るだけ、俺は優しい笑顔を作る。

「俺のこの問題に関わったら、もう戻れない」

「…………どういう意味ですか?」

俺は少し大袈裟に息を吸って。

吐き出して。

問題の言葉を、言う。



「俺の側に立ったら……最後には、必ず死ぬことになる」



「………………」

関羽が、ただ俺を見る。

それから、少しずつ眉間に皺を寄せて、俺を睨むようになる。

「……本気で言っているのですか?」

「勿論だ。俺も、華佗も、最後には必ず死ぬ。俺が引き込んだ奴らも…………」

朱里なんて、真っ先に症状が出ていたぐらいだ。

「あなたが引き込んだと言った彼らは、それを知っているのですか?」

「知ってるよ。そいつらの死は確定している」

事実として、伝えておこう。

確定ではないだろうが…………それでも、普通に生きて普通に死ぬよりは早く抹消されるのは間違いない。

「だから、関羽。お前が俺の隣に立ちたいって言うのは構わない。それ自体はとても嬉しく思う。でも…………来たら、お前は死ぬ。それを延命させる術はあるが、止める術はない」

「…………」

愕然とした表情のまま、固まる関羽。

俺は更に、言葉を繋げていく。

「ある程度は話そうか。朱里のことだが、あの子はここまで踏み込んでいない。聡明な彼女は俺のあることに気付き、その部分を制約させるため、自身にも枷がついただけだ。確かに俺の問題に関わってはいるが、決定的な部分まで踏み込んでいる訳じゃない」

だとしても、あれだけの影響を受けてはいたが…………それでも、世界から抹消されるほどまで酷い事態にはならなかっただろうと思う。

ただ、あの時は朱里の知恵がなくなると蜀の存在が危ういとしか思っていなかったが…………肝心の蜀が、もうあるって言うんじゃな……。

「……死ぬ、というのに。何を成そうと……?」

搾り出した言葉に、俺は丁寧に答えていく。

「確かに俺や華佗は死ぬだろうけど、その結果と同時に、もう一つの結果も生まれることになるはずだ。そのための……準備が多すぎるってことかな」

「しかし、その結果と同時に……北郷殿の本心に関わった全員が――――」



「死滅、する」



ぎゅっ――と、手と唇を強く結ぶ。



少しだけ、時間が経ち。

「…………曹操殿は?」

「知らないよ。桃香も知らない。知ったら、死んじゃうから」

「……嘘では、」

「ないよ。死ぬのが嘘だったら、もっと気楽に手伝いを申し出るんだけどね」

未来云々のことを抜きにしても、協力者はもっと増やせたはずだ。それこそ、華琳とか。

「…………そう、ですね。その通りだ……北郷殿は、人を利用するのと頼ること。この二つには躊躇いがない。それでも、そんな北郷殿が、嘘をついてまで隠すことになるとすれば……」

割と酷いこと言われている気がするな。その通り過ぎて言い返せないけど。

「…………何故、それを先に言ったのですか?」

「死ぬこと?」

「はい……何も言わずに手伝わせる方法なんて、幾らでもあるのでは?」

「あるけどさ……これ、本当に大事なことなんだ。誰かにバレてもダメだし、途中退場も不可。生半可な覚悟で手伝われて、土壇場で逃げたり裏切られたりしたら目も当てられない」

「だから、先に確認を……ですか」

「そうだね」

関羽が少し目を逸らして、思考に没頭する。

俺は胡坐をかいて、膝の上に肘を立てて頬杖をつく。

「結論として言えるのは、俺の目的を手伝うってことは、俺のために死ぬってことだ。曹操とか、桃香とか。自分の主君のためじゃない。本当の目的を捨てて、俺に仕えるって意味合いになる」

「…………」

「それをどうするかは、関羽次第だ。といっても……関羽が桃香を捨てて俺のところに来るとは思えない。それでももし、桃香よりも俺を選ぶって言うのなら……それ相応の意思と証拠を見せてくれないと信じられない」

「…………そう、でしょうね」




静かな、沈痛な空間が作り上げられる。




関羽はどんな条件でも受ける――――そんな覚悟でここに赴いただろう。

俺が関羽を信用するかしないか、それも含めて。

だが、これはさすがに想定外だったはずだ。どれだけ辛くても、どんな死地があると分かっても立ち向かうつもりでいただろうが。

道中がどれほど過酷で凄惨でも、最後にある自分が無に帰るとすれば――――今までの全ての努力は徒労に終わる。

それこそ関羽は、桃香のために俺に力を貸そうとしてくれている。なのに、俺を手伝うということは、死を意味する。本末転倒だ。

「…………あまり時間も無い。部屋に戻って、よく考えるんだ。お前自身が、どうしたいのかを」

「……………………」

関羽は立ち上がり、重い足取りで出口に向かう。


そして、扉に手を掛けたところで、止まる。



「…………どう転んでも、私は半端者で終わるのでしょうか?」



俺を救えないと、自分の中の義を裏切ることになり。



俺を救うと、自分の生は終わり、桃香への忠誠に報えなくなり。



「…………そこまでが、俺の計算だと思っていい」


「っ――――」



姿は見えないが、関羽の震えのようなものが伝わってきて。



「……本当に、その傲慢な優しさは…………桃香さまが、あなたに惚れ込む訳だ」



扉を開けて、そのまま出て行く。




「…………ふぅ」



どうなるか、分かったものじゃないが。

後は、関羽自身の心次第だ。俺を選ぶのも、桃香を選ぶのも。

でも…………関羽が俺を選ぶって展開は、本当に想像出来ない。下手をすれば、今の話を桃香にされて、それで桃香の意思を仰ぐ可能性だってあるが……。

「それはそれ、だ」

もう、俺の中で桃香という存在はある種、別次元になっている。

危険とか未知とか、そういうのじゃなくて。

桃香にはもう、何を言っても通用しない。嘘も冗談も、本音だって。

あの子は何も知らないけど、俺の全てを知っている。あまりにも壮大な巨悪に俺が立ち向かっていることを、察している。

理不尽な何かに怯える俺を、あの子は意地でも救い出そうとしている。だから傍に居てって、叫ぶ。

そこまで理解に及んでいる桃香に、そしてその直感を疑いもしない彼女に今更何を知られても……大きなマイナスにもプラスにもならないだろう。

「…………はぁ」

目が覚めてから、疲れることばっかりだ。

これ以上心労を増やさないで欲しいが……。





     ◆  ◆  ◆





ガチャッ――――




また、数時間ぐらいだろうか。

ぼんやりと、思考を巡らせ続けていたら、扉の開く音。

「~~♪ ~♪」

鼻歌を歌いながら、こちらに近付いて来る。その声で、もう誰だか分かるというものだが。

「お元気そうですね。一刀さま」

部屋の前まで来たのは…………。

「見ての通りだよ、朱里」



今回の事件で、最も重大な案件を持つ――――朱里だ。



ようやく来てくれた、という感じだが。

「今、もう真夜中です。時間の感覚、ありますか?」

「なんとなくそれぐらいだろうな、とは思っていたけど。何故?」

ここに閉じ込められてから一睡もしていないから、時間の感覚はずれていないと思う。

俺がそういうと、朱里は少し顔を膨らませて。

「そですか。わたしが必死に政務をこなしている間、一刀さまはここでのんびり座って楽をしていたんですね」

「…………急に何を言い出すんだ」

「いいえー、べっつに。あれから一睡もしてないので、なんか変に気が高ぶってるだけですっ」

確かに、目の下にクマが見える。見えるけどさ。

「あれからって、華佗に治療してもらってから?」

「そうですっ」

一睡もしてないのは俺もだが、言わない方が良さそうだ。

「大体、俺を好きになってくれたら~とか、何言い出してるんですかっ。急に変な話振られるから、何かの罰なのかと思って辺りを見回しちゃいましたよ!」

「張飛のことか。再戦とか面倒だからさ」

「だとしても、もっと他に言いようがあると思いますけど。思いますけどっ」

めんどくせぇテンションだな、今日のこいつ。

「苦労してるみたいだが、それを俺に言われても」

「何か労いの言葉はないんですか、そうですか」

「手が触れられる位置に来たら、頭ぐらい撫でてやるけどね」

なんて。

適当に冗談を合わせたつもりだったんだが。

「あ、そうなんですか♪」

何故か嬉しそうに、手を叩く。

「何を嬉しそうに…………ん?」

その手には、牢屋の鍵が。

「…………なに持ってるんだ――って、なにしてる!?」




カチャリ――――と。




朱里は――――あっさりと、鍵を開けて。



牢屋の中に入ってきた。



で、扉を閉めて鉄格子の間から手を通して、また再び鍵を掛ける。



そして――――鍵を、部屋の出入り口のほうに、投げ捨てた。





これで、牢屋の中には俺と朱里だけ。


この部屋の中も、俺と朱里だけ。


誰かが巡回で入ってくるか、用事があって来ない限りは、朱里はもうこの牢屋からは出られないってことになる。




そんな状況に満足したように、背中を向ける朱里は頷いて、





首だけ俺の方を振り返って、身を乗り出した俺を見て。





「だって、対等に話さないと」



なんて、薄く笑う。



こちらに堂々と近付いてきて、どかっと俺の膝の上に座り、


「お、おいっ」


「ようやくお話が出来る……あぁ、長かった」


当たり前のように、俺に体重を預けてきて、俺を見上げては、



「改めまして……お久しぶりです、一刀さま。本当に……本当に、お会いしたかった」



少し声の大きさを落とし、落ち着いた様子で――――純粋な笑顔を、向けてきて。



「……なんか、そういう朱里の顔、初めて見た気がするよ」

「初めてかもしれませんよ? ずっと、誰か彼かが見ていたし……」

「それもそうか」

俺と朱里だけの空間なんて、まだお互い牽制し合っていたあの天幕の中だけだったか。

そっ……と、頭に触れる。

すると、朱里から俺の手に頭を擦り付けてきた。

「人に触れられたのも久しぶりです……最近はみんな、わたしのことを怖がっていましたから」

「体調の問題?」

「そうです。原因不明の奇病なんて……近寄りたくはないでしょう? 普通に考えたら」

そうかもしれない。自分に移るかもしれないと思えば、尚更だ。この時代は、医療なんてあってないようなものだから。華佗は例外。

……華琳や秋蘭は、それでも俺を気に掛けてくれていたんだよな。

「今日の政務でも、部屋に入ってくるのを躊躇う人もいて……部屋の前に書類を置いといてって言ったら、すんごい量が置いてあって……それを見る度、なんだか、悲しくなっちゃって……」

本当に、寂しそうに言う朱里に。

「俺は大丈夫だって知ってるよ」

少し、強めに抱きしめてやる。朱里は目を閉じて、俺に黙って頭を撫でられ……為されるがままだが、とても心地良さそうに俺に身を預けている。

「そういう人ばかりじゃないですもん……一刀さまが何か関係あるのかとも思いましたが、今までに無い病気の可能性も否定しきれない…………だから、桃香さまにも近付かないようにお願いしてました」

「言えば来なくなるような子じゃないと思うけど、あの子」

「ふふっ…………でも、こうやって何も気にせず、気兼ねなく話せるのは……すごく、気が楽です」

俺の言葉には答えず、自身の安堵を口にする。

仕事が出来ないっていうのは、全てにおいてプレッシャーになる。

特に朱里は上に立つ立場というのもあって、日に日に焦りや苛立ちが募っただろう。俺でさえそうだったんだし。

「さて、一刀さま。この環境はすごく安心できますが……」

「あぁ、そうだな」

頭を撫でる俺の手をとって、



「肝心のお話し合いを、しましょうか」



「そうしよう」



ようやく――ようやくだ。




ようやく、俺はこの牢屋にぶち込まれた意味を、完遂出来る。




続く


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